朝。3
医務室の中は教室と同じアイボリーで統一されたカラーリングで、ベットが二つ。奥には小さい机と椅子2脚おかれていた。
僕は初めて医務室に来た。体調が悪くなるということが初めてだった。医務室を見たことが無かったし、今まで医務室に連れられたクラスメイトは居なかった。
そこには今一緒にいたT-Cと同じ顔のM-C(メディック)が立っていた。
家のコンシェルに似たボディ・デザインだが表情がなく、冷たい印象だ。
後ろに付いて来た筈のT-Cはいつの間にか消えていた。
「知ってます、そこの椅子に座って」堅い表情のまま椅子に座る様に促した。
「心理的なモノかもしれないけれど、確認するわ。腕を出し頂戴。」
他のコンシェルと違い、表情は堅く、無表情のまま、僕の出した細く白い腕を一瞥すると血圧正常値より+20、心拍数+25…精神的な物ね。」
事務的に淡々と結果を僕に話す。結果を知っても僕にはどうしようもない。
「サイコスキャナする?」少し躊躇いがち僕に言う。僕にはどうしたらいいか
答えを躊躇していると、M-Cはじっとこちらを見ていた。
答えを聞く前にM-Cは目を逸らし、「そんな感じなら大丈夫です」壁の方に向かいながら上を向き、「ここで休んでも十分な回復が望めない、部屋に帰って十分休んで明日に備えなさい」言い終えると僕に向き直り、「帰って。ウォーカーは必要無い。薬も必要ないけど、部屋にリラクゼーションプログラム送るから、コンシェルに展開してもらいなさい。」
僕は席を立ち、赤い縁取りの扉に歩き出した。
何か、初めて感じる、不安なような、何かを失ったような不思議な気持ちのまま、音もなく空いたドアの外に出た。
ドアの外にはいつもと同じ白い通路があった。いつもの黄色いガイドの線が今は少し不気味に見えた。
僕の肖像 穂邊 一綾 @TaNABRooN
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