第五十二話 迷走中
「わ、私はり、陸と付き合ってるの……だ、だからあなたとは付き合えないのよ!」
と、そんなことを言ってしまう真冬。
なるほど。
(そうだ、真冬は俺と同じなんだ! 俺が澪から逃げるため、真冬の名前しか出せなかったように……真冬もパッと名前を出せる男が、俺しかいなかったんだ!)
そして、彼女は瞬時にこう考えたに違いない。
やはり陸と同じように。
これ。
もう『好きな人がいる』ことにすれば、諦めてくれるのでは?と。
悪くはないと思う。
ただし。
陸が目の前にいなければだ。
「お兄ちゃんのことが、好き…….嘘、でしょ!?」
言って、凄まじい圧を放ちながら、陸の方へと詰め寄ってくる奈々。
想定通りだ。
目の前に当の本人がいるいる状況で、こんなことを言えばどうなるか——そんなの火を見るより明らかだ。
「お兄ちゃん! どういうこと!? あたしのお姉様と付き合ってるって本当!?」
と、そんなことを言ってくる奈々。
しかも、『付き合ってる』ことにグレードアップしている。
などなど。
陸がそんなことを考えている間にも。
「返事しなさいよ! お姉様と付き合ってるの!?」
「そ、それは…….」
「ハッキリしなさいよね! 付き合ってるの!?」
いや、どうすんねんこれ。
というか。
(ん、あれ? 『陸と付き合ってる』ってワードだと、爆死のトリガーにはならないのか?)
今までの経験上、十分なりそうな気がする。
いったいどういう——。
くいくい。
くいくいくい。
と、引っ張られる陸の手。
見れば、真冬がテンパった様子で、声を出さずに口だけ動かしている。
(えっと、なになに——)
『お願い、話を合わせて! 奈々から逃げるには、もうこれしかないの!』
なるほど。
やはり陸と同じ発想だったわけか。
(にしても仕方ない。例えタイミング的に悪手だとしても、もう言ってしまった以上は乗るしかない)
そうしないと、下手をすれば真冬が奈々に告白されて死んでしまう。
流石にそんなの罪悪感やばすぎる。
さてさて。
となればするべきことは一つ。
「あぁ、言ってなかったけど……俺は真冬と付き合ってるんだ」
「付き合って……る?」
と、陸の言葉に対し背後から聞こえてくる声。
陸はそれに対し——。
(ん、あれ? 背後?)
おかしい。
だって奈々は目の前に——。
「陸は、真冬と……もう付き合って、るのか?」
と、再び背後から聞こえてくる声。
陸がその声の聞こえてくる方へと視線をやると、果たしてそこにいたのは。
「み、澪……っ」
死に戻りしたら美少女達が俺の童貞を狙ってくる件〜しかもヒロインにヤバい奴らが混ざってるなんて聞いてないんですが〜 アカバコウヨウ @kouyou21
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