開拓村のヨーグルト 🐄

上月くるを

開拓村のヨーグルト 🐄





 さあ、みなさん、お待ちかねの給食の時間ですよ~。(´ω`*)

 この土地で採れたものばかり、大切にいただこうね。(´艸`*)


 相変わらずの黙食は残念だけど、それも人類の歴史のひとつと思うしかないよね。

 午後の郷土学習でお話するけど、そのヨーグルトにもこの地域の歴史があるのよ。



 

      🏞️




 いまからおよそ八十年前……そうね「ええっ!」っていうほどの大むかしだよね。

 みなさんのおとうさんおかあさんはむろん、オバサンだって生まれていなかった。


 そのころ、日本は中国へ踏み入っていたの、そう、おとなりのウクライナへ武力を進めているいまのロシアと同じようにね。ほんとに「ええっ?」だわよね~。(-"-)


 ただね、いけないのはこの国のエライ人たちで、国民……みなさんのご先祖はね、言うがままになるしかなかった、ウソばかりで正しいことを知らされなかったしね。


 具体的に説明するとね、耕地の少ない山間部の人たちが大量に満州へ送られたの。

 満州というのは日本が勝手につけた名前だから、現在の地図には載っていません。


 当然、そこに住む中国の人たちがいたんだけど、強引に追い出してしまったのね。

 みなさんだったら、どう? そんなことをした国を恨んで、神仏を呪うでしょう。


 


       🧩


 


 でね、いけないことをした国にはやはり天誅てんちゅうが下り、日本は大負けに負けたの。

 だけど、エライ人はだいたいズルイから(笑)自分だけ先に逃げてしまったのね。


 置き去りにされた国民がどんな目に遭ったか、みなさんにも想像がつくでしょう。

 侵略した中国から逃げて来るとき、たくさんの大人や子どもの命が奪われた……。


 やっと生き延びて帰国した人たちにも、迎えてくれる故郷はどこにもなかったの。

 で、国が渋々提供したのは不便な山奥や川のそばなど、だれも住んでいない場所。


 満洲開拓に行った人たちはふたたび荒れ地を開墾して小屋を建て、田畑を拓いた。

 男性はソ連(現ロシア)の極北の捕虜収容所にいたから、女性と子どもだけでね。




      🌳




 南関東も例に洩れず、国から提供されたのは、ふたつの大河川が合流する三角洲。

 せっかく開墾しても大雨が降るたび流されてしまう、とんでもない土地だったの。


 でね、何度もの辛い試練を乗り越え、ようやくたどり着いたのが酪農だったのね。

 みなさんの机に配られたヨーグルトには、そんな地域の歴史が詰まっているのよ。


 ごめんなさい、少し話が長くなったわね。👩‍🦱

 では、心から感謝して「いただきます」。🥛




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