第7話 平安の日本に戻る

 晴明と式神は平安時代の日本に戻った。都に行く歩く道。木陰があり、岩があり、風に吹かれて心地の良い場所。家に帰る途中の旅路だったことを式神は今更だが思い出す。常識がどこかに置いて行ってしまう、そのような光景ばかりを見てきたためだろう。


「見慣れた都の光景。良かった。戻って来れたのですね」


 式神はホッとした様子で言った。式神だというのに常識人っぽい反応だ。


「ああ。よし。また次の機会があったら、他のところも行くとしよう。あ。それと。このことは人に言うでないぞ」

「そもそも信じない人ばかりだと思いますが」


 一方で次もどこかに旅する気の陰陽師である。ある意味世界を渡り歩くのも彼の趣味だ。楽しくなるのも無理はない。しかしその旅で得たことを他人に伝えることはない。信じてくれないというのもあるが、もう一つ理由がある。


「証明できないもの。この時代にないもの。説明できないもの。該当するものは仮にこの目で見たとしても、他人に伝えてはいけない。記録に残してはいけない。それが規則というものだろう?」


 異なる世界の旅路は行った場所を刺激するものではない。それだと侵略者と変わらない。旅行者でいるには……心の底から楽しむのみ。

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安倍晴明、摩訶不思議な星に行く いちのさつき @satuki1

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