宇宙の旅へ! ようこそ!

夕日ゆうや

宇宙のすゝめ

「マルコ、今度一緒に旅行行こうよ」

「まあ、いいけど。そういう理彩りさはどこに行きたいんだ?」

 俺は理彩に恋をしている。一緒にいられるというなら断食もする。

 それくらいの覚悟はある。

「じゃあ、宇宙!」

「宇宙かー。ここから新幹線で十二時間。宇宙エレベーターで三日」

 俺は旅行のプランを立てていく。

 携帯端末で旅費と道のりを調べて、来週のクリスマスに設定する。

「これでいいか?」

 俺がプランをまとめて、理彩の携帯端末に送る。

 クリスマスの四日前から行くプランだ。

「さすがマルコ! いいプランだね~。でも来週? クリスマスに合わせるの?」

「それくらいは譲歩してくれ。クリスマスイベントもあるし。楽しめると思うよ」

「ふふ。楽しみ~♪」

 理彩は嬉しそうに席を立って女子メンバーと会話を始める。

「マルコ」

「なんだよ。アッシュ」

「もしかしてクリスマスでデートか?」

「なっ!」

 俺は慌てて理彩の方を確認する。

 聞こえていないらしい。

「的中か。まあ、お前ならうまく行くと思うよ」

「あ。ああ。ありがとう。アッシュ」

 アッシュはニヤリと顔を歪め、続ける。

「しかし、宇宙か。お前苦手だろ?」

「ああ。あの浮遊感。地面に足の着かない感じは嫌いだね」

「それでもOKするくらい好きなのか」

「告白プランもあるしな」

 宇宙旅行の中に告白をするプランがあるのだ。それを頼んだので、クリスマスの日、俺は告白する。

 宇宙に大輪の花が咲くらしい。クリスマス限定だ。それをブーケと見立てて大切な人と一緒に見る。

「へいへい。うまくいくだろうな!」

 怒った口調でアッシュは唇を尖らせる。

「なんだ? あいつ」


 ▽▼▽


 旅行に行く前の緊張感を持ち、俺は旅行に向かう。

 宇宙に到着し、ふわふわと浮かぶ空間の中、俺は宇宙に咲くソーラーパネルの花を理彩と一緒に見て微笑む。

 宇宙の重力エリアから見る花は格別だ。

「きれいだね」

「う、うん」

「どうしたの? 今日のマルコ、少し変だよ?」

 告白すると思ったら緊張してきてしまった。

「あ、あの!」

「どうしたの?」

 理彩がこちらに向き直り、目を合わせてくる。

「お、俺と付き合ってくれ!」

「え!」

 そこで店員から差し出されるクリスマスケーキ。

 その中央には指輪がある。

「ふ。ふふ」

 突然、笑い始める理彩。

「おっかしい。付き合うのに、婚約指輪なの?」

「え。そうじゃないのか?」

 日本人の風習は分からん。

「いいよ。付き合ってあげる。わたしいいお嫁さんになるね」

「お、おう」

「指輪、はめてくれないの?」

「え。ああ」

 俺は慌ててケーキにのっている指輪を手にして、ティッシュで拭き取り、理彩の細い指に通す。

「ふふ。ありがと」

 こうして俺と理彩は正式に恋人になった――。

 重力エリアを出て、宇宙を眺める。

 昏い中、輝く星々。

 浮遊感があるが、これも悪くない。そう思えた。

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