目が覚めた時、覚えている夢と覚えていない夢がある。
内容が荒唐無稽すぎたり、悪夢だったりすると、ショックでディテールを忘れてしまうことがよくある。
夢はなんでもありだ。そしてなにかに繋がっている。死にそうになった人が見た死後の世界がお花畑であるように、どこかに接続される。
読み返してみて、ああ、そうだなあ、夢だもんなあという記述、そしてはっとさせあっれる部分がいくつもあった。いくつか挙げておきたい。
一つの夢であっという間に百年が経つ(第一夜)
子供に「知ってるじゃないか」と言われ、なぜか素直に『するとなんだか知ってるような気がしだした』と思う。だがいったいなにかはわからない。(第三夜)
「お爺さんの家はどこかね」
「臍の奥だよ」(第四夜)
海へ飛び込んでもいつまでも水に着かない無限地獄(第七夜)
『こんな悲しい話を、夢の中で母から聞いた』という唐突な終わり(第九夜)
とくに僕が好きなのは、第十夜なのだが、これは読んでのお楽しみ。豚、怖い!
角川文庫版解説に「いわゆる精神分析的にこれを見れば、いろいろのことが言えるだろうが、ここではそれにふれない」とあるが、このレビューでもそうしておきたい。ただただ、読んでいる間、独特の気味の悪いトーンを楽しんでいただきたい。
自分はこんな独創的な夢を見ているのだろうか?