大切な人たち 🏠

上月くるを

大切な人たち 🏠





 わたしの目、キャンバスみたい。( *´艸`)

 てらいもなくヨウコは思っている。(´ω`*)




      🎨





 生きている時間のほぼ百%が独りゆえに(笑)物事の観察が習性になったらしい。

 くノ一よろしく気配を消す法も自然に習得し、たぶんだが 🧕 お邪魔にならない。


 行きつけのカフェのスタッフたちも、窓際の奥の席の女性客の存在を忘れている。

 木卓や椅子、シュガー、塩、水のコップ、空の珈琲カップに混じる一個の有機体。


 その年老いた個体は、頭上から降り注ぐやわらかなジャズの音のシャワーを浴びながら、本を読んだり俳句をメモしたり掌編の下書きをしたりと、内面活動を展開中。





      🎸




 とりわけ今朝は、老眼鏡とマスクの下に、しずかな微笑みを浮かべているようで。

 なんだかいつもよりほんの少し楽しそうなのには、ちょっとした訳があるみたい。


 真実を訊くに訊けず、いいえ、あのご夫婦の人柄ならきっと……そう信じながらもお節介屋さんから無用な情報がもたらされると、少しだけ気持ちがゆらいだりした。


 生来なのか後天的なのか自己肯定感がきわめて低い性質につけこまれ(笑)自信満々風の饒舌から真偽の定かでない話を吹きこまれやすい、それがヨウコの弱点。




      🌞




 でも、昨夕の電話のさりげないひと言で霧が晴れるように明らかになったようで。

 希いをこめて信じて来たとおりであってみれば、もはや望むことはひとつもない。


 大切なご夫婦の真心が確認できたいま、幸せで幸せで申し訳ないほど幸せで……。

 浅春の朝、田舎のカフェの奥の席で、気配を消した客がそんな想いに浸っている。


 どうでもいい事実を知っているのは、ピカピカの玻璃はりを隔てた植栽の枯薔薇だけ。

 去年一年間ヨウコを慰めてくれた純白の花が、今年も咲き始める準備をしている。




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