Dampf girl
月城
第一話 不思議な街
そろそろ新しい生活にも慣れてきた頃だった。
ある日、学校からの帰り道で私は声を掛けられた。
「お嬢さん」
スーツを着た会社員のような姿だった。
目には大きなクマがあり、髪の毛はあまり整っていない。
「え、なんですか?」
「あなた…悩んでいますね?」
…驚いた。
確かに私は新しい学校での人間関係など、悩んでいることはあった。
しかし何故分かったのだろうか?
「あの、何で分かったんですか?」
「それは秘密です」
男は少し微笑みながら言った。
「いいところへ連れて行ってあげましょう」
「え、いいところって…」
「さあ、私について来てください。」
そういうと男は路地裏の方へ歩き出した。
「ちょ、ちょっと!」
私は止めようとしたが男の足は止まらない。
どうやら本当にどこかへ行くつもりらしい。
「少しついて行ってみようかな…」
私はついていくことにした。
男の歩く道はほとんどが人のいない薄暗い道だった。
「あの、どこへ行くつもりなんですか?」
私が男に行き先を聞く。
「…夢の町ですよ」
そういうとまた男は微笑んだ。
しばらくすると明るい出口が見えはじめた。
ここが男の目的地のようだ。
出口を出るとそこの町にはたくさんの工場や歯車で動く機械のようなものがあふれていた。多くの建物に煙突が生えており、空には煙が立ち込めている。町の人もあまり見ないような格好をした人達ばかりだ。
「う、嘘…」
こんな町は物語の中だけだと思っていた。
「ふふ、驚きましたか?」
気味の悪い声で私に聞く。
「ここは一体…」
「ここは夢の町、人々は何にも縛られずに夢の為だけに働く。あなたにとってもここは理想の町なはずですよ」
…確かにそうかもしれない。
あそこは私にとって暮らしにくい世界だったな。
ここだったら、もう一度、何もかもやり直せるのかな…
「あなたがもし望むなら、もうこのままここにいることもできますよ?」
これを断ったら、私は何も変わらない。ずっと辛いまま。
そんなことならいっそ…
「…私、この町にいたい」
Dampf girl 月城 @rokunii0621
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Dampf girlの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます