第6話 爆散、終わる


 前回のあらすじ。

 エスプレッソはほろにが甘い。



 完全敗北した時のお話で、このシリーズを〆たいと思います。


 職場がこのまま無くなり続けると困るので、私は一念発起して看護師の資格を取ることにしました。3年間、必死に勉強して無事に免許を取得し、めでたくとある病院に就職できました。


 病院という場所は職場としてはかなり閉鎖的。守秘義務が徹底され、情報が漏れないという良い面と、内部の問題が秘匿されやすい悪い面が同居しています。


 昨今は件の電通の事件を経て働き方改革が導入され、極端な残業はなくなりましたが、当時は睡眠時間が4時間くらいしか無かったです。

 入職1年目は、大体どこの病院でもそうかと思いますが、研修課題研修の日々。医療処置の予習復習、業務の振り返りと反省を帰ってからも書き続けます。

 

 睡眠不足と、疲労困憊でご飯の材料さえ買いに行けない日々が続いた果てに、血反吐を吐いて入院しました。復帰してもまた吐いてしまうから、別の病院へ再就職し、そこからは落ち着いて仕事をすることができました。公務員だったから出来れば続けたかったけれど、健康には変えられない。


 初めて、潰れる前に辞めました。

 でも病院は私一人辞めたところで揺らぎなく地域の為に立ち続けていました。

 完敗です。

 いっそ清々しいくらい、完敗したのです。



 再就職後しばらくしてから、看護学校の同期と会いました。


「常ちゃん、元気そうじゃーん! 胃はもう大丈夫?」

「○ちゃん、元気元気! 食欲あり過ぎて困るくらい。そっちはどうよ」


 近況を話し合って、楽しくご飯。話題は尽きず、時間はあっという間に過ぎて行きます。そろそろお開き、という時です。


「そういえばさ、常ちゃんが前いた病院大変だね〜」

「ん? なんかあった?」

「経営不振で、○県の病院局ごと関連の4病院、売っぱらわれるって」


 唖然茫然。


「新しい建物作ってさ、広げ過ぎた上、トイレのサイズが合わなくてすんごいお金掛かったらしいよ」

「そんなクソみたいな理由ある⁉︎」

「トイレだけにねぇ」

 

 笑いあって食後の珈琲を飲み干しました。



 あれを最後に職場は爆散していません。今の職場はありがたいことにそろそろ8年。



 それにしても振り返ると色々ありました。

 二度と爆散しませんようにと願いつつ、このお話は終わりです。


 

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みな爆散していく @nekoken222

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