『気質』

あぁあああああーーーーー

疲れる!!!!!


今日はなんなんだろうか?


過去最多、1日で3回も未来がわかってしまった。

こんなことは今までなかった。

というか、最近頻度が高くなっている。


しかし、知ってしまったからにはなんとかしたくなってしまって今日は朝から奔走。奔走。奔走。


学校もサボっちゃったなぁ…

今から行っても6時間目…


今までこんなことなかったからなぁ…


げっ…


不在着信22件

通知48件


見たくない…


恐る恐るスマホを見る。


最初は怒りの連絡。

途中から心配の連絡。

最後の方はただただ無事を祈る連絡。


その連絡のほとんどは幼馴染からの連絡だった。


彼女は僕の能力のことを知っているわけではないが何かを感じ取ってる節があるのもまた事実だった。


その時、彼女からの着信があった。


一瞬出るか迷ったが、意を決して通話マークをタップした。


「…出た。

…よかった…

今どこなの?

何してたの?」


こたえにつまる。


やましいことはなにもない。


だけど全てを話すには偶然がすぎる。


全ての出来事に『偶々』遭遇し、その全ての収拾を人知れずはかったなんて説明しても誰も信じないだろう。


誰だってそう思う。僕だってそう思う。


だからこたえにつまる。


何も悪いことはしていないのに。


でもこれは自分の決めたことなのだから仕方がない、なんて思っていると、


「なんで何もいわないの?

まぁいいよ…

学校早退するからいつものところで待ってて。」


僕のこたえを待つ前に彼女は電話を切った。


僕は事実を言えないもどかしさに頭を抱えながらいつものところに向かった。



……


…………


いつものところ。

それは僕と彼女の家の中間地点にある公園のことだ。


ふとベンチに目をやると彼女は座っていた。

目は少し赤い。

泣いていたのであろう。


僕は結局なにも思いつかず、どう話しかけようか手をこまねいたところで彼女から声をかけてきた。


「…いっちゃん」


『あー…と、心配かけてごめん。』


「うん、すっごく心配した。

何やってたの?ってさっき聞いたけど、

多分困った人助けてたでしょ。」


『うん、まぁそんな感じ…』


「いっちゃん、困った人いたらそうするだろうし、下手な言い訳とか説明もしないだろうし、黙って【僕が悪い】みたいな感じにするもんね」


さすが幼馴染。

困った人がいたらなんとかしたくなってしまうし、それに対して何も言わない、そんな僕の気質をわかっている。


「でもさ、いっちゃんがそういう人達をなんとかしたいと思うのと同じくらい、私もいっちゃんのこと心配してるし、なんとかしたいと思ってるんだからね?」


『そうだね、心配かけてごめん。』


「ごめん、ていえばすむことではないけど、

もういいよ。

三つ子の魂百まで、っていうしね。

いっちゃんは変わらないと思う。」


『…だと思う。』


「でもね?変わらなくてもいいよ。

それだけいっちゃんが優しいってことだし。

ただ…」


『…ただ?』


「危ないことだけはやめてね?

あと、身の丈に合わないこと!」


『うん』


「困ってる人を助けるのって、とてもいいことだと思う。」


「でも、その時いっちゃんに何かあったら、いっちゃんの家族や友達とかがその【困った人】になっちゃうからね?」


「いっちゃんのことだから絶対今日みたいな人を助けみたいなのやめないと思う。

だけど、一瞬でもいいから家族や友達のこと、思い出して。」


自分のことは置いておくあたり、この子も相当に優しい。

だから感化されていまの僕があるとも思う。


そんなことを思いながら、


『わかったよ、心配かけてごめん。

そしてありがとう。』


「わかればよろしい。

じゃあ、【護守神社】の和風パフェおごってね!」


『なんで!?』


「おばさんに学校サボったこと、言っちゃおうかな…」


『それを言ったらそっちもだろ!?』


「私は早退です。いっちゃんとはステージが違うんだよ?

クックック…」


『これはパフェを奢らざるをえないか…』


「わかったなら早く行こ!

あそこ5時までだから!」


『はいはい…』


僕は能力によって人を助けられたことと、彼女の優しさに確かな満足をえながらパフェを食べに行くことにした。


「はやくはやく!!」


そう急かす彼女に微かな違和感を覚えながら。

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偶然のイッチと先見のメイ ことばのあや @ko_to_ba_no_aya

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