相方が語る話①
「……ポーションは置いてないのか?」
好奇心で聞いた事をちょっと後悔していると、相棒がそう言った。
確かにカウンター越しだからか分からないけど、ポーションらしき物を見ていない。
「ポーションは薬師さん達とケンカになるから置かないんだって」
俺が話していた男の子じゃなくて、さっきの女の子が答えてくれた。
「はいこれ!サービス!」
そう言って差し出されたお盆の上には飲み物が入ったコップが置かれてる。
……飲み物?
「……」
相棒は基本喋らない。喋らないというか何て言ったらいいのかを考えてるんだけど、まとまるまで少し要するから必然と無口になる。
で、
「……緑色?」
その間に俺が答えてしまうから余計相棒は喋らなくなる。
というか、口を開かなくなる。
「りょくちゃって言うお茶!おいしいよ?」
「聞いた事ないなぁ?」
相棒を見ると首を横に振ってるから相棒も知らないんだろう。
「東のほうのお茶だって、花兄が言ってたよ」
「東?」
東の方にある国はここらの国とは色々と違う、と言うより別物だと聞いたことがある。何故なら、
「……海を渡った東の大陸のこと……?」
そこのお茶?
(落ち着けそんなわけない、だってまずたどり着くのが)
「そう!その東大陸のお茶!」
「え"」
「は?」
東大陸とは海をだいぶ渡った先のそのさらに先にある大陸で、
大陸が違うから文化や価値観、場所によっては言葉すら違うとされている。けど一番の特徴は、
たどり着くのがまず奇跡。だろう、
何故なら広い広い海の上に道標なんてあるわけがなく、少しでも航路を見誤ると渦潮に巻き込まれたり、巨大生物のナワバリだったり、そうじゃなくとも凶暴な海の生物に襲われたり、天災にみまわれたりと、とにかく危険と隣り合わせどころか一歩間違うと一瞬で死ぬという綱渡りの航海。
そりゃあたどり着くのがまず奇跡も納得だ。
(ここ最近飛行技術の発達がすごくて、東大陸にも海路よりは速く着けるようになったとか聞くけど……それでも天災がなくなる訳じゃないし、空にも凶暴生物はいるしなぁ……)
見たことがないのももちろんあるけど、空路でもたどり着くのがまず奇跡だと思ってる。
「………………」
さっきからずっと無言だけど相棒も多分そう思ってる。
(ドラゴンといい、東大陸といい……)
魔法使いや魔女は人智を超えた存在。
「マジかぁ〜」
信じてなかった訳じゃないけど、本当なんだなぁとすごく思った。
花かんむりの魔法使い こにすにす @konisunisu
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