神さま願うなら私は

赤猫

安らかに暖かに

明日目を覚ますことがないことを願って布団に入る。

そう願っても嫌でも目が覚めて朝が来る。


いつもなら目なんて覚めないのに今日は真っ暗な部屋に私一人がぽつんと座っている状態だった。

もう寝かせて起きたくない。


「君は起きたくないの?」

「そうだね朝が来るのが怖いんだ」

「怖い?どうして?」

「朝が始まったら学校に行かないと行けないでしょ?」

「ガッコウ?」

「勉強して社会に出ても恥ずかしくない人をつくるための場所だよ」

「ふぅんそうなんだ?嫌なのはどうして?」

「先生にさこんなこともできないのかーって怒鳴られたり、クラスの子たちに嫌がらせとかされたりして嫌になっちゃった」

「君は何もしてないのにね可哀想に…でも大丈夫!僕が何とかしてあげる!なんてったって僕は天使だからね!」


誇らしげに胸を張っている少年のような見た目をしてる彼のことを私は見る。

背中には人間には生えていない真っ白な羽に頭には光る輪っかが付いている。

どうやら私は夢を見ているらしい。


「さぁ、言っちゃって!君の願い」

「どうせ起きたらまた朝なんでしょ、アホらしい」


私は横になる、どうせこれは夢だ。

天使なんているわけが無いし私はまたどうせ朝を迎えるんだ。

天使と言っていた変人が慌てて寄ってきて揺すってきたり軽く叩いたりする。

それがどうも夢とは思えない感覚で私は違和感を覚える。

体制を変えずに私は目を開けた。


「夢じゃないの?」

「夢じゃないよ!こうして僕と君は繋がれたんだよ?君の強い強い願いが僕を呼んだんだよ」


本当の本当なのだろうか?嘘ではないのだろうか?そんな都合のいいこと存在するはずない。と理解していても私はそれに縋らずにはいられなかった。


「じゃあ私のお願い聞いてくれるの?」

「もちろん!僕はそのために産まれたんだから!」


私は呼吸を忘れてしまったかのように息ができなくなった。

本当に叶えてくれる?私の願いを心の底から欲しているものを?


「…私の明日を奪って」


その言葉に目の前の彼は目を見開いて少しだけ固まった。


「本当にそれでいいの?君から明日を奪ったらいつもの朝を迎えることも当たり前のこともできないよ…?」


私はその問に対して微笑んだ。

だって未来の想像なんてできない、できたとしても暗いことしか考えられない。

生きることに希望なんて微塵もない。


「いいよ奪って私から後悔なんてないし…もう疲れちゃった」

「…そっか、よく頑張ったね」


彼はそう言って私のことを抱きしめてくれた。

頭を撫でてくれた。

私よりも暖かい体温に安心して目から大粒の涙が溢れてくる。

息をするのも苦しくて咳き込んでしまう。


「けほっ、ごほっ…は」

「深呼吸しようねほら僕の真似して」


背中をさすりながら、息を吸ったり吐いたりしている彼の真似をしながら私は呼吸をする。


「僕と一緒に行こうか、大丈夫君を一人になんてしないから安心するまで一緒にいるから」

「…ありがとう」


朝少女の家には悲鳴が響いた。

そこにはベッドで優しく笑って眠っている冷たい少女の遺体があっただけだった。

その手には真っ白の羽が握られている。

彼女の葬儀の後に出てきた彼女の日記には怨嗟と悲しみが綴られていた。




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神さま願うなら私は 赤猫 @akaneko3779

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