第1話 友達と映画

「あ、また飛んできた。ヨッピィ、見て見て。最近そこの河川敷の竹藪に、カラスが巣を作り始めたみたいでさ」


「本当だ、10匹以上いるね」


「おい、響人! ちゃんと映画見てたか?」


「見たよ。というか、今までに何回も見てるよ、俺んちのDVDなんだから」


「俺は初めて見たけど結構面白かったよ。今流れてるこの曲って、この映画の主題歌だったんだね。なんか聞き覚えがある」


「映画より前に作られた曲だけど、不思議と映画の雰囲気に合ってるんだよな。次に見る映画は、主題歌が有名なやつで選ぼうか? やっぱり音楽がいい映画って良作が多い気がするし」


「でもなぁ……こうして響人んちで映画鑑賞会をするのもさ、今日で最後になるかもしれないんだ……。今月に入って、親から勉強しろの圧力がすごいんだよ」


「息抜きに見る分は今までどおり続けていいんじゃない? これからは勉強会という名目で集まれば」


「勉強、勉強……。あぁ、受験憂鬱ぅ~。早く終わってほしい……」


「そう、それなんだ。受験が終わったら……みんな進路がバラバラになっちゃうかもしれないだろ? だから、この4人でさ、中学生活最後の思い出作りに……何かしてみないか?」


「バラバラって……山さんも同じ高校志望でしょ?」


「カズと響人はいいよ、頭いいからさ! 俺とヨッピィは結構ギリだから!」


「いや、高校が別でも、連絡すればいつでも集まれると思うし……」


「それに……この間、響人が救急車で運ばれた件もあっただろ? あぁ、この4人でいつでも遊べると思ってるのは間違いなんだ……って気付いたんだよ」


「うっ、それ言われると何も言い返せない……。結局、意識を失った原因が検査後も分からずじまいなんだよなぁ。また起こりそうでホント怖い……」


「響人は『寝れば何でも治る』っていうくらい健康体だったもんね。……うん、俺もみんなで何かしたくなってきた!」


「……で、思い出作りって、何をするつもりなの?」


「チャリで遠出とか、キャンプとか?」


「バーカ、何のために今日この映画をチョイスしたと思ってる! おぉ、そういえば俺たちと人数も一緒だったな」


「今日の映画……って、まさか……」


「そう、死体を見に行くんだよ!」

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