エピローグ 俺と僕

「第一発見者だし……警察が来るまで俺たちもここにいたほうがいいよな? 自分で企画しといてなんだけど、まさか本当に見つかるとは思わなかったよ……」


「それにしても……響人、よく分かったね?」


「僕……いや、俺の部屋からカラスが集まってるとこ、ヨッピィも一緒に見ただろ? 何となく……ピンときたんだよ」


「みんな、よく平気で話していられるな……。俺はまだ吐き気がする……」


「あの人、ずっと泣いたままだね。……親友だったんだろうな」


「けど、なんであのアパートじゃなく、こんなとこまで来たんだろう?」


「河川敷なら……アパートの大家さんに迷惑をかけることはないって考えたんだよ。 バカだな……死んだら結局、誰かしらに迷惑をかけることに変わりはないのに……」


「響人……死んだ人を悪く言うのはやめたほうが……」


「いいや、バカだよ。自分の死であんなに泣いてくれてる親友がいるのに、相談せず独りで勝手に決めて……死んだんだ。本当に、バカだったよ……」


「……そうだよな、死にたくないのに死んでいく人は世の中にいっぱいいるのにさ。響人は死にかけたばっかだし、余計そう感じるよな?」


「俺は……本当ならあの時、死んでたと思うんだ……。ちょうど近くで自分から死を選んだバカな魂があったから、有効活用したんだろうな……神様は」


「……ん? 何、今のどういうこと?」


「俺には神様が2度目のチャンスをくれたってこと。なぁ……みんな? 今、ここで約束をしないか?」


「ど、どうしたの、急に改まって?」


「この先……高校や大学、社会に出て……どんなにつらいことがあったとしてもさ、独りで抱え込まないで、家族や友達……俺たちの誰かに必ず相談するって」


「響人……」


「間違ってもあんな……残された人を悲しませるようなマネを、自分から選ぶことはしないって……約束しよう?」


「そう……だね、俺は約束するよ! そんでじいさんになっても……またこうやってみんなで集まりたいな!」


「……また死体を見つけるのは勘弁だけどね? ホント、さっき見た映画のとおりになっちゃったし」


「……フフフン、フフン、フフフフ、フンフン……」


「鼻歌って、山さん……さすがに不謹慎……」


「いや、その……レクイエム代わりということで……。そういえば、あの主題歌ってどういう意味なんだ?」


「『私の横に立て』じゃないの?」


「ド直訳すぎ……。あれは『そばにいてほしい』ってニュアンスでしょ」


「……カズほど英語得意じゃないもん。響人ならどう訳す?」


「俺? 俺も得意じゃないけど……。そうだな……『僕と共に生きよう』……かな」

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