18-7 ~ 併合手続き ~
都市併合。
言葉だけでも凄まじく複雑な手続きと、利権関係者の調整が必要な……敢えて手を突っ込みたくない代物に違いはないのだが……
「中央政府への手続きは完了しました。
勿論、データ上での話であり、実際の併合にはこの併合承認に両者の押印が必要となりますが……ここのところに指を捺すだけです、はい」
その書類仕事を、この優秀なる
俺はただ言われるがままに、最後尾の都市と市長名の横に指を捺しただけ、だったが。
──そりゃ確かに電子化が進んだ上、テンプレートがあるとは言え……
──たった一晩で終わるものなのか、普通?
中央政府も電子化が進み、テンプレートの書式に必要事項を記入の上、両者の合意さえ取れていれば……要するに婚姻届みたいなものだろうか?
それもこれも、都市データが完全に電子化されているからこそ、それらに必要なデータも揃っていて、やり方さえ知っていればそう難しくはない、とリリス嬢は言っているのだが。
「……はい、都市『ペスルーナ』側でも捺印が確認されました。
これをもって、データ上では都市『ペスルーナ』は消滅し、市民は全て海上都市『クリオネ』に籍を置くこととなります」
あまりにも
そもそもの話であるが、まだ何かが変わった訳でもない。
何しろ……
「では、これから海上都市同士を連結する作業を開始します。
幸いにして我が都市『クリオネ』は未だ拡張工事中であるため、連結そのものの手間はそう大きくなく……海面下にあるインフラの連結処理をどう行うかが最大の課題となるでしょう」
現在はただデータ上において都市併合が完成しただけであり、海上都市『ペスルーナ』と海上都市『クリオネ』を実際に連結する工事は、「これから開始される」ためである。
尤も、これはベースとなる『クリオネ』側が動くのではなく、される『ペスルーナ』側がこちらに移動する必要があるため、今すぐの作業とはならないようだったが。
──実のところ、本当に連結する必要なんてないらしいんだけどな、本来。
要するに都市とは金の動きであり、インフラの塊であり、人の集まりではあるものの……実のところ、この未来社会においては、「市民が精子の提供を受けられ子供を産める」システムさえ構築出来てしまえば、都市としての機能はそれだけで満足されるのだ。
父親である市長と同じ場所に住みたいというのは、ただの女性の願望であり……そう女性が望むからこそ、高い税を取って一つの都市を作成して住まわせ、そこに市長を据えた今の都市という形になっている、とどっかで聞いたような覚えがある。
「既に『ペスルーナ』は、海上都市に設置を義務付けられている『海流による移動を防止するための動力』を利用して、移動を開始しました。
幸い、『ペスルーナ』は同じ太平洋上にありましたので、3日ほどあれば連結可能となるでしょう。
位置につきましては、核融合炉のある北部を避け、南東部に連結することとし、お互いの通路となる幹線道路と、地下にあります物資輸送用通路とを建築する工事は既に両都市側で開始しております。
なお、発電機構と上下水機構はしばらくの間、お互いのを利用することで調整済み。
唯一の難点でありました都市水平高の違いにつきましては、『ペスルーナ』側が浮力を調整し5cm上げることになっております」
「……はぁ」
話している内に興が乗って来たのか、
ただ、まぁ、彼女が言っている通り、別々にやっていた都市が一つになろうとするのだから、それは様々な問題が発生してもおかしくないのだろう。
彼女の語り口を聞く限り、それらの問題は優秀なる
「幸いにして緯度の差はそれほどありませんでしたので、各家屋の空調設備を新調する必要はありません。
『ペスルーナ』で見込まれる電力消費量の増加も、現在の発電施設で十二分にまかなえる範囲に収まります」
リリス嬢は仮想モニタに次々と数式を展開し、俺の前へと運んでくるものの……俺は正直、彼女の説明を聞いてすらいなかった。
むしろもう一枚展開した仮想モニタを使い、今眼前で説明しているリリス嬢のスカート内部を覗けないかを試してみたいという欲求さえ芽生えているくらいである。
──流石にやらないけどな。
正直、スカート内部の盗撮を試みたところで、スリルなんて欠片もなく……もし見つかったところで怒られないどころか、素直に真正面から命令すれば彼女は何の躊躇いもなくスカートをまくって見せてくれるだろう。
……いや、むしろそのまま気絶して倒れかねないか。
「これで我が海上都市『クリオネ』の都市面積は拡大し、都市連結時には人口13,000まで市民の受け入れが可能となります。
併せて住居建築も続ける予定であり、10日後には人口3万人までは可能となりますので、既に移民の受け入れを再開したところです」
そう語りながらも、ちらちらとこちらへ視線を向けて来るリリス嬢の様子に、俺は彼女が何故必死にここまで熱心に併合を進めたのかを理解した。
──
確かに俺は、人口1万人を突破すればご褒美にキスをくれてやるみたいなことを言った訳だが……
正直に言ってしまうと、約束した俺自身が既に忘れていたくらいである。
ただ、まぁ、あんな約束であってもこれだけ必死になるほどに頑張ってくれるなら、キスくらいならくれてあげても良いなぁと……何と言うか、俺自身が少年時代だった頃の、誘惑系美少女のような心理になってしまう。
──ああいうの、嫌いだった筈なんだが……
自分自身の身体に価値があると自認してしまうと、自然とこういう態度が出てしまうものだろうか?
俺はそんな自意識の問題を抱えつつも、取りあえず
「よし。
このまま市民へと通達と、都市結合準備を進めておいてくれ。
移民の受け入れは、その都度行うように」
「は、はいっ!
あなたの御心のままにっ!」
市長という立場の所為か、酷く偉そうになってしまった俺の言葉に、だけど優秀なる
両都市が合併したのは、予定通り……この併合決定手続きを終えてから、ちょうど3日後のことだった。
絶対ハーレム世代の男子校生 馬頭鬼 @umama01
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