第3話

薄れゆく意識の中、床に広がる真っ赤なそれを、おれは無意識にひと舐めしていた

生への本能なのか、乾いた喉への贖罪なのか


あぁ、死ぬんだなぁ…

生まれ変わったらお金持ちになりたい

いや、ほどほどで、困らないくらいでいい

友達も欲しいな、たくさんはいらないけど

彼女もいて、旅行とか行って…


何かが頬を伝う

最後まで求めたばかりだな

生まれ変わったら自分で頑張ってみよう

仕事してお金稼いで

趣味も見つけて友達も作ろう

彼女も作って、旅行に連れて行こう

生まれ変わったらきっと…


視界がぼやけてくる

見慣れた誰かの部屋が歪み、知らない誰かの部屋に見える

涼をくれた床の温度さえ分からなくなってきた

自分がどんな体勢をとっているのか、仰向けなのかうつ伏せなのかも分からない

最後くらいせめて上を向いていたいな

白くなっていく視界の中、声にならない声で出た最期の言葉は、意外なものだった


死にたくないなぁ…


























































死とは終であり、最後ではなく最期

終わりなき旅はなく、次もまたない


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生きるということ ごま太郎 @gomatrou

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