月冴ゆ

 少し前までは、うっかりカーテンと窓を開けたまま寝てしまうと、日光で起こされる季節だった。そして今では、寒さで起こされる季節となった。部屋に温度計を置くようになってから、数度の温度の違いがわかるようになったことが嬉しい。


 この現代社会では、自分そのものが「自然」であることを忘れている人が多い。「人」を相手にばっかりしているから疲れるんだ。「もの」と向き合う時間も取ってバランスを取った方がいい。こういうことを書いてある本を読んだので、部屋には観葉植物を置くようにしたり、窓をずっと開けているようにしたり、土日は一人で山へ散歩をしに行くようになったりした。


 人間、思い通りに行かないことがある。そのときは憤慨したり悲しんだりして、冷静ではない。しかし、これでいいんだって思える時点がどこかでくる。僕の場合はさっき言ったように、呆然と歩いているときとか、コーヒーを入れているときとか。これでいいじゃないか、と思う。これ以上、なにも求めることはない。


 人間、自分に価値を見いだせるときもあれば、何をするにも無気力で、すべてのことに価値を感じないというような状況に陥ることもある。


 

 『情報社会と言うと、絶えず情報が新しくなっていく、変化の激しい社会をイメージする人が多いかもしれません。しかし、私の捉え方はまったく逆です。情報は動かないけれど、人間は変化する。(中略)困ったことに、情報や記号は一見動いているように見えて、実際は動いていない。だから余計に、人間は自分の変化を感じ取りにくくなるのです。』  (ものがわかるということ 養老孟司著)



 そう、人間は常に変わっている。ただ、それは〇〇があったから、✕✕のように変わったという、公式のようなものではない。まったく同じことが目の前で起こったとしても、捉え方はそれぞれの個人の状況によって異なる。人間が自然であるというのはそういうことで、その一瞬一瞬を読み取って対応していくしかないのだ。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蒼昊 二条 奏 @09kshooh23

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ