おわりに

 私は遠出する前にこれを綴っている。書き残しておくことは、私が最後であるかもしれない以上意味はあるはずだ。数年や数十年で読んでもらえるなどとは思っていない。それは私が一番分かっている。人の影など一切ないのだから。


 これは私の遺書であると共に、これを読んだ誰かが世界で何が起きたのかを知ることを願って書いている。私は生に歪んでしまった。私には何も出来なかった。これからできることは起きたことを後世に託すことだと考えた。


 ずっと引き篭っていたから詳細な描写は出来ないが、これを読んだ誰かが私のように何も知ることなく果てることはないように、できるだけ鮮明に書いたつもりだ。


 これは山の中から一本の小さな針を探すような無謀な試みであることは理解している。それでもこれを読んだ貴方がいる、それだけで私が生きることにしがみつき続けた意味も、見い出せるはずだから。世界が報われるはずだから。




 死にゆく世界の歪みより、希望を込めて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死にゆく世界の歪みより 幻楽 @GR4956

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ