いつかは終わる物語
@ayano_yuu
第1話
やあ、君。俺のこと、ソコで観ているんだろう?観るだけじゃなく、俺を動かしているのも君だったりするのか?
君が俺をソコで観ているのは分かっている。何故かって?
それはココがゲームの中の世界だからだ。ここは遥か昔、自分が子供だった頃に本当に大人気だったRPGゲームの世界。
俺は18歳からずっとゲーム三昧な日々を送ってきた。それは小学生のとき、中学生のとき、高校生のとき、その全てのときに親の教育方針から"ゲーム"や"スマホ"っていうのをやらせて貰えなかったからだ。買い与えすら貰えなかった。
今のご時世、それらを持っていない子供に共通の話題って物は無く、友達なんてもんは出来なかった。それを親に言うとそんなものが必要で出来る友人など、友人とは言えないと罵られたものだ。
その反動からなのか、大学進学を機に一人暮らしを始めてからはゲームばかりしていた。講義もロクに出席せず、ゲームして寝ての繰り返しだ。モニターの前に
そして将来の展望など無く実家に帰り、母親に小言を言われながらフリーターで小遣い稼ぎをしながら肥溜め
母親は母親で、その頃には自らが無努力的ゆえに
だが、いつかはソレも限界に到達する。刻一刻とこの家族は、限界に突き進んでいた。
俺はその日、バイトの帰りにゲームショップの新作ゲームコーナーに併設された中古コーナーの
当時はディスク状ソフトが約5千円で実機が約4万円もしていたが、それが今じゃ1720円と1万円ちょっと。実機は箱にも入っておらず裸で、グレーがかったボディは陽に焼けて黄色く変色していた。本来は付属していた三色ケーブルに至っては別売りだ。
君は、三色ケーブルなんてもの知っているだろうか?名前の通り、赤と黄と白色のケーブルで、テレビやモニターに繋げる。今じゃHDMIだとかDisplayPortなんて物になっているが、ソレらの旧型品だと考えてくれていい。映像だの音質だのが綺麗になったところで、こうやってケーブルを接続するという行為自体は大して
何はともあれ、三色ケーブルと今のモニターやTVは直接接続出来ないから、わざわざ途中で電気屋に寄り、変換器を購入する必要があった。それからいそいそと自転車を起ち漕ぎして家に帰ると、急いで実機とモニターを繋ぎ電源を入れた。
気が付けばご覧の有様だ。
あの機械と魔法の混じった世界に入り込んだのだ。眼前の空は何処までも深く、そして青く、遥か彼方まで広がっている。牧草の匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。鼻を通り抜け、喉を太陽が育てた青い味がした。立ち上がると、小高い丘から見下ろすように小さな村が見えた。憧れだったゲームの始まりの村。主人公たちの出発点。
俺は何をすべきなのか、それともさせられているのか、それは分からない。何一つ取り柄も、才能も、生きる価値も無い、三無い人間だ。
現実と違ってゲームはいい。無価値な登場人物なんて誰一人として存在しないのだから。
こんな無価値な人間でさえも、
背を風が叩き、千切れた若葉が舞い散っていった。
いつかは終わる物語 @ayano_yuu
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