第2話 甘く、白く、ふるもの

「甘すぎじゃない?」

 鍋の中身をぺろりとなめて、姉が言う。僕も味見して、首を傾げた。

「こんなもんじゃなかった?」

「いつも分かんなくなるね」

 その返事には了承も含まれていて、僕は鍋をぐるぐる混ぜるのに戻る。白いもやがだんだん液体のように重みをもち、できた、と火を止める。二人で鍋を持ち屋上の扉を開けると、冷たい風がびゅうと容赦なく吹き付けた。さ、寒い。

 なんとか運んで、僕が鍋肌に触れて暖をとっていると、姉は手袋を取って指を鍋に突っ込んだ。

「やっぱり、甘すぎる」

「まだ気にしてるの」

 笑うと、薄闇に息が白く残る。

「今日ぐらい、いいじゃん。少し甘すぎるのが降ったって」

 寒いんだから、と言うと、姉はそうねと頷いた。


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第二回お題「甘い」

スペース改行抜き300字ちょうど

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300字SSまとめseason2 なかの ゆかり @buta3neko3

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