「星読みのアトリと狼の娘」お読みいただきありがとうございました。
長いことひとりで小説とも呼べないような文章を書いてきましたが、中でも一番長いお話になりました。去年から小説を書くのが楽しくて仕方なくて、たくさん文章を書いたのですが、この作品を書き始めたことがそう思えるきっかけでした。
このお話は、とにかく自分の好きなものを詰め込んで書きたくて考えました。その前に書いた作品がとても不完全燃焼だったので、全力で楽しみたかったのです。草原、遊牧民、旅、疑似親子などの要素がそれです。もう少し深くテーマを考えていくにあたり、主人公ふたりのビジュアルが決まりました。
結構行き当たりばったりで構想も十分に練らずに書き始めたので、反省点も多々あります。というわけでひとり反省会をします。
反省点1:展開がワンパターンで同じことばかり起こる
狼の襲撃だー、で起こる話ばかりでしたね。一度くらい、もうちょっときつめに人間の悪意とぶつかるエピソードを入れて動きをつけたかったな、と思います。そもそも「きびしい気候の一年を通して相互理解を描く」みたいな大テーマがあり、一番大きな障壁は自然ということにしたかったので、そこまで悪役を作れませんでした。読み返すと単調さが気になります。見通しの甘さ、構成力のなさ、キャラクターパターンの少なさなどが浮き彫りになったなあと思うので、次になにか書くときは生かしたいです。
反省点2:そもそものキャラ設定が行き当たりばったり
最初はリコの年齢を5歳にしていました。アトリとイリスの過去は考えていて、それと同時期に拾われていることにしたかったのでそんな設定になったのですが、書き始めて無理があるなあ、と思い最近の改稿でこっそり7歳に改変しました。子供っぽいところをもっと書きたかったけど、葛藤を描くならもう少し精神的に大人でないとちょっと無理があって、結局どっちつかずの子になってしまいました。残念。
イリスが5話で「(アトリが仕事してる間)リコを預かろうか?」と提案するのも、書いて出したあとに失敗だーと後悔したところです。さすがに子を失った経験のある女性が軽はずみに言えることではないのですが、こちらは整合性を取ろうとしてイリスのキャラをそっち寄りにした結果、アトリにもリコにも愛情深いキャラになってくれたので怪我の功名だったかもしれません。
キャラ設定はちゃんと練っておこう!(あたりまえ体操)
反省点3:描写がくどい
草原の国に旅行したこともあって、その空気や遊牧生活の営みが好きだからこういう舞台で物語を書き始めたのですが、説明描写が多くてくどかったな、と思います。6話はくどすぎて読み返したときに「キーッ」ってなって削った。実際にある名詞を説明しながら使うのではなく、もっと直感的に分かりやすいものに置き換えながら登場させてもよかったのかもしれません。
他にもいろいろ、細かい描写やエピソードを明かしていく順番など反省点は山盛りですが、とりあえずはこんなところで。
アトリがターバンを外して生活し始めるところ、リコがアトリの呼び声に応えて帰ってくるシーン、イリスとアトリの関係性など、書きたかったところは全部楽しく書けました。それどころか別に書きたかったところじゃないシーンも書いていて楽しかったです。書けば書くほど、キャラクターたちがどんどん好きになってしまい、アトリがリコをかわいがるように私も彼らがかわいくて仕方ありませんでした。
アトリは本当に等身大の、迷いと不安とさみしさとを全部抱えつつ孤独を選ぶ男として書き始めましたが、最終話を書いているときはびっくりするくらい肝が据わってカッコいい男になってしまい自分でびっくりしました。妻子を得ると人は変わるんだねえ……なんて思ってみたりして。
時々お休みしながらもコンスタントに更新して、一年間で完結できたことは自信になりました。web小説のメインストリームを行く小説では決してないけれど、いろいろな方に読んでもらえたのもうれしかったです。読んでいただき反応をくれた方、ハートを押したり星で評価してくれたりした方、直接感想を伝えてくれた方! みなさまのおかげで書き切ることができました。本当にありがとうございました!
また次の作品でもお会いできれば幸いです。