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 そんなこんなで、メイコちゃんは都合七周ほどダンジョンをぐるぐる回った後、無事に元の世界へ帰ることが出来ました。

 まさかここまでアホの子だとは、よもやよもやの大誤算です。ぴえん通り越してぱおんです。


「酷い目に遭ったし……マジで……」


 被害者意識全開な台詞ですが、同じ過ちを六回も繰り返さなければ良かっただけという事実から目を背けるのはやめましょう。

 ただ、考え方次第では得難い経験であったかも知れません。人間とは、失敗から学ぶ生き物であるからして。


「疲れ……てはないけど……なんか変にカラダ軽いし……」


 エステ通いやデトックスマッサージの比ではない効能を秘めたダンジョン巡りを幾度も重ねたことで、美容と健康がひと回りアップデートされたメイコちゃん。

 そういう意味合いでは、実りある時間が過ごせたと言えるでしょう。良かったですね。


 ちなみに溶けたセーラー服は、ちゃんと元通りです。

 アフターケアは万全なのです。






「あ」


 立っていた場所が学校の屋上、時間帯は下校時間間際だったため、家路に就くべく鞄を取りに教室へと足を運んだメイコちゃん。

 するとそこには、クラスメイトのオタクくんの姿がありました。

 向こうもメイコちゃんの方を見て、あからさまに渋い表情を浮かべました。


「…………」


 メイコちゃんはオタクに厳しいタイプのギャルなので、普段から彼を理由も無くイビっています。

 焼きそばパン買って来い、みたいな昭和のヤンキーじみたパシリ行為も日常茶飯事です。つまりメイコちゃんはギャルとヤンキー両方の性質を持っているのです。


「おいオタク」


 さあ。いつもであれば、自分より背の低いオタクくんに壁ドンならぬ顔ドンの要領で五百円玉を押し付け、間食を買いに行かせるメイコちゃん。

 けれども、ダンジョンで色々と酷い目に遭うことで痛みを知り、虐げられる側の気持ちを理解した今の彼女なら、きっと大丈夫。

 これからはオタクに優しいタイプの需要ある黒ギャルとして、練馬区民に末長く愛されることでしょう。


「アタシ今ムシャクシャしてんだ、焼きそばパン買って来い」


 所詮メイコちゃんはメイコちゃんでした。音痴で有名なガキ大将と同レベルです。音痴というところまでそっくりです。ちなみに音痴を指摘すると物凄く怒ります。そっくりを通り越してほぼ同じです。

 顔面に五百円玉を押し付けられ、急ぎ焼きそばパンを買いに行ったオタクくんの背中を見つつ、メイコちゃんは満足げに呟くのでした。


「戻って来たらミルクティーも買いに行かせよーっと」











 ちなみにメイコちゃんとオタクくんは一年後に交際、三年後に同棲、六年後に結婚するのですが、それはまた別の話。





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メイズ・ブラック・ガール 竜胆マサタカ @masataka1201

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