空に浮かぶ花びらに乗って

大紙小者

第1話 花びらとの出会い

ぼんやりとネットでニュース記事を眺めていると、「花びらで空旅を!」というキーワードを見つけた。

どうやら新種の花びらが発見されて、その花びらは膨らんで空に浮かぶことができるらしい。ニュースサイトの写真が切り替わり、朝焼けに照らされた無数の花びらが大空に舞っている様子が目に入った。


浮かんでいる花びらの下には紐で繋がれた籠がぶら下がっている。

そして、その籠の中には楽しそうに乗っている人達。

まるで熱気球のようだ。「乗りたい」と強く思った。


普段であれば「いつか行きたいな~」で終わらせていたと思う。

でも、この時は違った。

新種の花びらに乗って大空から大地を見下ろせば、いままで知り得なかった世界を知ることができるのではないかという期待に胸が高まった。そう、俺は空を舞うのだ。そんな突拍子もないことを突然思った。


世界地図を広げて、新種の花びらに乗れる場所を確認するところからスタート。

ユーラシア大陸の中央の場所であることがわかった。

「これは、もう行くしかない」


決心した俺は日本から飛行機に乗り、直行便でまず20時間移動し、その後、馬車に揺られて最寄りの街へ移動した。そして、さらに街から山林に入り、長い時間彷徨って、ようやく目的地に到着した。


何にも野宿して、早朝に新種の花びら乗り場に向かった。

まだ夜明け前で、周囲は薄暗かったが、多くの新種の花びらが大地に横たわっていた。なんて幻想的で神秘的な光景なんだ。

半透明の花びら達。美しい。


現場での、ガイドらしき人達が新種の花びら達を膨らませ始めており、活気に満ちている。新種の花びらは炎の熱気で膨らむらしい。

生態系は不明であるが、なんて面白い奴らなんだ。

そして、どんどん新種の花びら達が膨らんでいく。


新種の花びらが膨らみ、いざ搭乗!。

一緒に搭乗した人達の出身地はバラバラだった。というか、とく辿り着いたな。

籠の中は出発前の熱気に満ち溢れていた。


どーん、ふわりっ!!!

待ちに待った瞬間だ。

浮かんだ。身体が浮かんだ!この何とも言えない浮遊感に感動した。

新種の花びらはぐんぐんと上昇して、大地から離れていく。

地上の建物もどんどん小さくなっていく。

辺り一面に浮いている新種の花びらにぶつかったりしないのだろうか、と少し不安に感じながら上昇していった。


周りを見渡すと、他の新種花びらもどんどんと上昇を始めていた。

他の乗客たちから興奮のあまり歓声が沸き起こている。

皆、笑顔である。楽しい。この浮いている感覚はとても楽しい。そして、充実感。


大地が徐々に朝日に照らし出されて、明るくなってくる。

そう、この光景を見たかったんだ!

朝日が眩しい。

新種の花びらに乗って空の上から空気を思いっきり吸いたかったんだ!

冷たい空気を肺一杯に吸って吐くという動作を何回繰り返したことだろうか。

「今日は特別に高くまで飛ばすよ!」


長い黒髪が似合う素敵な女性操縦士さんに皆の熱気が伝わったらしく、意気揚々である。新種の花びらにも乗れて、さらに素敵な操縦士さんにも出会えて、なんて俺は幸せなんだ。


「風が気持ちい」

俺は1人呟きながら、空の雲が近づいてくるのを眺めていた。

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空に浮かぶ花びらに乗って 大紙小者 @ookami3

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