第10話 星を見ろ星を
天文部‥またの名を恋のキューピット部。
なぜそんな不名誉な渾名が付けられることになったのかは、今から‥‥知らん誰も知らん。
少なくとも10年くらい前?多分そんくらい。
まぁとにかく、その名前が付けられ始めた当時の天文部は何故か女子しかいなくて、それも各クラスの女王蜂、所謂カースト上位層の溜まり場だったらしい。
彼女達は別に星に対して興味は無く‥ただ単純に放課後の溜まり場やヘアアイロンだの何だのを置く倉庫として部室を利用していただけだった。
そんな魔王城になっていた彼女達の園には客も多かった、彼女達の友達やら派閥の諸々‥そして何より多かったのが彼女達にお伺いを建てにきた学年の女子達。
そうお伺いだ。
具体的には、クラスの誰それが気になってて‥あのワンチャン狙ってもいいすか?みたいな。
これを聞いた時、私は思ったよね。
幕府かなって。
恋のキューピットじゃなくね?そんな可愛い代物じゃないだろ。
もはや恋の御奉行じゃん。
何?学校に恋の御成敗式目発布してんの?
てかお伺いって何だよ自由恋愛じゃねえのかよ。
とまぁ‥そんな地方の弱小大名もとい学校の女子達は、その時の天文部に参勤交代さながらご挨拶に来ていた。
そして、時には恋愛相談なんか乗ったりしているうちに‥恋のキューピット部そう呼ばれるようになったとさ‥。
「‥めでたし、めでたし」
いや、めでたくねぇよ。
唐突に訳の分からないことを言い始めたと思ったら、こっちそっちのけでその成り立ちを話し始めたよこの人。
その癖どこにもめでたい要素が見当たらなかったよ。
恋のキューピット?ロベスピエールの間違いだろ。
じゃな何?僕、自分の恋愛も満足にしたことないのに学内の恋愛相談所に入部したってこと??
しかもこの先輩と?
おいおい、この世界のどこに自分の恋も射止められないキューピットがいるというのか。
そのOG達も草葉の陰で泣いてるよ。
「‥‥ふっ」
「おま、いま笑ったな!?アレだろ振られたやつがキューピットとか笑わせんなとか思ってんだろ!?」
自覚あるのかよ。
どうやらこの先輩にもまともな頭はあったらしい。
「私だって分かってるよ‥なんだよこのダサい通り名。通り名っていうか蔑称だろ。てか、私が入部してから一回も恋愛相談来たことねぇよ‥あれ、それってつまり私が恋愛弱者だと思われてるってこと?‥え?」
完全に臍を曲げぶつぶつと何かを呟く番原先輩。
そして僕とは別のもう1人の被害者は大きな音を立てて机に突っ伏していた。
「最低‥すぎる‥なんだこの部活」
うん、わかるよ。
早乙女がそう思うのも無理はない。これはない。
これだったら、星とか大して興味もないやつが集まった男女の交友サークルのがナンボかマシだ。
まぁ唯一の救いがあるとすれば‥もはや役立たずの負け犬しかいないキューピットを頼る奴なんて今の学校には居ない。そうだ、そうだよ。
これから普通の天文部にすれば良いじゃないか。
早乙女も番原先輩も見てくれだけは良いんだ。
あまりにも階層が違いすぎて、恋愛の対象にはならないけど多分仲良くしてれば女友達の1人や2人紹介してくれるだろうし。
そうして、明るい未来へと想像を膨らませている僕にあの空気の読めない男、山内が待ったをかけてきた。
「あの‥お取り込み中申し訳ないんだけど」
「山内くん、ごめん。今どうにかこうにか高校生活を軌道修正できないか考えてるから雑談なら少し後に‥」
そう言って、山内を黙らせようとするが彼はそんなことはお構いないしといった様子で頭を下げた。
「お願いします、恋のキューピットの皆さんにしか頼めないことなんです!」
は?
「聞かせて貰おうか山内くん‥この恋愛強者の番原に!」
は?
僕の”前の席”がラブコメしてる 雛田いまり @blablafi
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