第43話 別れ

 ドラゴンとライラ・クロークが時空のはざまに飲み込まれ、皆息をのんだ。


「ああ!!」

「ひずみが……消えていく!?」

 先生たちが叫んだ。


「ライラ!」

 カノンは祈るような気持で時空のはざまを見つめた。

 時空のひずみが消えた瞬間、カノンは崩れ落ちた。

「そんな……」


 カノンは時空のひずみがあったあたりに、自分の全魔力を送った。一瞬、時空のひずみがもう一度現れたように見えたが、ほんの一瞬空気が揺らめいただけだった。空はただ、いつものように青いだけだった。


 ベンジャミンがカノンの肩に手を乗せた。

「カノン、大丈夫か?」

「……」

 魔力を使い果たしたカノンは、しゃがんだまま両手を地面に着き、茫然としていた。


 その時、カノンの背後から声がした。

「ごめんね、カノン。ペンダント、壊れちゃった」

「……!?」

 カノンは立ち上がり、振り返った。


 そこにはライラ・クロークが立っていた。

「貴方を守りたくて作ったペンダントだったのに……私が助けられちゃった」

 ライラはにっこりと笑っている。

「ライラ!」

 カノンはライラに抱きついた。


「ペンダントが光って、時空のはざまからはじき出されたみたい」

 ライラはカノンを優しく抱きしめた。


「ライラはこれからどうするの?」

 カノンの問いかけに、ライラは首を傾げた後、つぶやくように言った。

「あの人の様子を見てから、また旅にでるつもり」

「あの人?」

「カノンのお父さん」

「……うん」


「まあ、私のことなんて覚えてないだろうから、遠くから見るだけだけどね」

「ちゃんと、会ってあげて。あの人、ずっとあなたのことだけを待ってるよ」

「え?」


 ライラはくすぐったそうな笑みを浮かべ、カノンから離れた。

「僕、案内してあげようか?」

「いいの?」


「うん。でも、会うのはライラだけにして。僕は……」

 うつむくカノンの頭をライラは撫でた。

「あの人、カノンにつらく当たったの?」

「……べつに」

 カノンはライラから顔を背けた。


「カノン」

「何?」

 振り返ったカノンの額に、ライラは手を当てた。

「貴方は大事に育てられたのね」

「ライラ?」


 ライラはカノンの額を、突き放すように軽くおした。

「私のことは忘れなさい、カノン」

「え?」

「私は貴方を捨てたわ。それは言い逃れのできない事実。私には母を名乗る資格はないの」


「でも」

「貴方を立派に育てた、本当の両親を大事にするのよ」


 ライラはそう言うと、空に飛びあがった。

「さようなら、カノン」

「ライラ……お母さん!」


 カノンはライラを追いかけようとしたが、すでにライラは姿を消していた。

「カノン……」

 ベンジャミンとアデルがカノンを抱きしめた。


「僕……、僕……」

 カノンの頬に涙がこぼれた。

「カノン……俺たちがいるだろう? それに、おじさんもおばさんも」

 ベンジャミンの言葉にアデルも頷いた。


「……うん」

 カノンは涙を拭いて、空を見上げた。


「さようなら、お母さん……。ううん、ライラ・クローク」


 カノンはベンジャミンとアデルに支えられ、魔法学校の中へ入って行った。



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調律師カノン 茜カナコ @akanekanako

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