突撃!!お前が晩ご飯

「ここが山岳地帯のログハウスかあ~。テンション上がるなあ~」

 俺は休暇に地方のログハウスに泊まっていた。外は寒いが、暖炉には薪がパチパチ燃えていて温かいし、囲炉裏には味噌煮込みうどんが煮えている。最高の11月だ。

 その時、窓の向こうに影が見えた。この影は……人の影だな。とんとん、とドアをノックする音がする。ログハウスの管理人でも来たのだろうか。俺はドアを開けると、そこには大きな熊が立っていた。

「さ、さよなら~」

「待て」

 俺は慌ててドアを閉めようとしたが、強い力で熊に押し負けた。熊はずいずい俺のログハウスに入って来る。

「どうも熊です」

「は、はあ……」

「正確に言うと熊人間です」

「熊人間って何!? そんな新しい概念持ち出さないで」

「改めまして熊人間です。お前の肉質は最高。食べます」

 熊人間は大きい口を開けて俺に襲いかかろうとした。

「ま、待って!! 展開が早すぎる!! 話し合いしようよ! 暴力反対」

「や、こっちも命がかかってるんで。待てない」

 熊人間は再度俺に襲いかかる。ああ、まだ作り立ての味噌煮込みうどんも食べていないのに……。ん?

「熊人間くん、人間の肉より美味しいものがあるよ!! たとえばほら、これとか」

 俺は慌てつつ味噌煮込みうどんをよそって、熊人間に渡した。熊人間は訝しみつつそれを肉球がついた手で受け取って、口をつけた。もぐもぐ咀嚼して、

「うまい」

「でしょ。ほらもっと食べて。みかんも芋けんぴもあるよ」

「ほんと?」

 熊人間は無邪気にも囲炉裏に近寄ってきたので、俺たちは二人で鍋をかこんだ。散々食い尽くした後、

「うまかった」

 と熊人間は呟いた。

「ね? おいしかったっしょ。お腹いっぱいになっただろうし、俺を食べるのやめて。里に帰って」

「帰りたくない」

 熊人間は俺にすすす……と近寄ると、俺のうでをむんずと掴んだ。

「ずっとお前の飯食いたい」

 それから熊人間は人里に降りて、俺と生活するようになった。

「飯、まだ?」

 熊人間ははちみつを容器からラッパ飲みしながら俺に催促した。

「はいはい、今出来るから……」

 俺は今日のご飯を二人分作りながら答えた。これじゃあ熊男っていうより、ヒモ男……?




「……っていうことがあって、最近忙しくてさー」

 俺は事の顛末を話すと、友人はわかりやすくジト目になった。

「もうどこから突っこんだらいいのかわかんねえよ。そんなことある?」

「あるからしょうがないじゃん」

「……でも、その熊人間から食べられずに済んでよかったね」

「ま、毎晩俺の方が熊人間を食ってるんだけどね」

「この話下ネタで終わるの!!?」

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ひとくちBL 階田発春 @mathzuku

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