第14話
第十四話 復活
「ここはぁどこだ、、、?」
俺は見慣れない天井を見ながらそう呟く。
「気がついたか?」
そう言って騎士のような身なりの男が話しかけてくる。
「誰だオメェ?ここはどこだぁ?」
「ここは、騎士団の本部だ。お前は建物にめり込んで気絶していたからな、、、ここまで運んできた。」
「あぁ、そういやわけわかんない奴にぶん殴られちまったっけか?」
俺はゆっくり起き上がると、服を着る。
「魔術師同士のケンカだろうが、建物に被害が及んでいるからな、、、取り調べをしないといけないんだが、、、」
俺は溜息をつくと、
バシュウウウウウ
騎士団の本部の中から何かが吹き出し、建物が破壊される。
「わりぃがそんなめんどくせえことには付き合えねぇ。そういうこった。」
そう言って俺は翼を広げ、飛び立つ。
騎士達は唖然として、立ちすくむだけだった。
「さて、これからどうすっか、、、」
俺は少し悩む。が、
「とりあえず飯でも探すか、、、」
そう言って俺は城外へと目指す。
すると薄い布をまとった人の列が続いているのが見えた。
ナンダありゃぁ?手枷?あぁ奴隷か、、、
「俺には関係ねぇ」
そう言って通り過ぎようとすると、
「このガキがっ、手こずらせやがって!」
「あんっ?」
女のガキが男二人に痛めつけられていた。
「何やってんだアイツら?」
蹴られるたびにその奴隷のガキは悲鳴をあげる。
「チッ、クソが、、、」
そう言って俺は急降下して男の手を掴む。
「何だオマエ?」
「クソッタレがぁ?ガキ相手にムキになってんじゃねぇよ。」
「俺達はこの奴隷に教育してやってんだよ。逃げようなんて考えたらためにならねえってな。」
そうやって男達はガキを見やる。
ガキはビクッと体を震わせ、俯く。
その姿を見て、俺は異世界転移する前の記憶が頭をよぎる。
「クソッ、変なことを思い出しやがる。」
俺は頭を抱え、腹のそこからくる怒りを感じていた。
「まっ、兎に角、、、無関係のやつはとっとと消えろ。」
そう言って男達は手をひらひらさせる。
「いひゃ、いひゃひゃひゃひゃ、いひゃひゃひゃひゃ、いひゃひゃ、いひゃーーーー」
ブラックホールは口元が歪み、空を仰ぐように後ろに反り返る。
「残念だったなぁ。俺がもうちょっと機嫌がよかったら、お前ら二人を生きて返してやったのによぉお。」
男達は少し狼狽えるが、
「何いってんだか。通りすがりの分際で。」
だが横には相方がいなく、辺りを探すと、地面に這いつくばって苦しそうにうめき声を上げていた。
馬車に乗っていた奴隷達や通りの人々がブラックホールの方を凝視する。
「クソがぁああ」
男はブラックホールに懸命に立ち向かうがそれも虚しく、
「おせぇよ、、」
ブラックホールは一瞬で男の背後を取り、
重力波を発射する。
男は20メートル先の壁に叩きつけられ、そのまま気絶する。
「おいおまえらぁ、あとは勝手にしろ!」
ブラックホールは奴隷達にそう告げる。奴隷達は困惑するがやがてそれが歓喜に変わる。
奴隷達は一気に馬車から飛び出し、各々散っていく。
「何やってんだ俺はっ」
ブラックホールは柄にもないことをして違和感を感じる。
すると後ろから、ひょこひょこっと女のガキが付いてくる。
俺は無視を決め込むがなかなか離れない。
「このまま飛んでおさらばするか?」
そんなことを考えていると、
「ねぇねぇ、貴方はどこから来たの?」
「どこだっていいだろ。」
「これからどこに行くの?」
「オメェには関係ねぇ。」
そうブラックホールは冷たくつき放つ。
だがそれでも、、、
「さっきは助けてくれてありがとう。あなたについていってもいい?」
バシュウウウウウ
俺は翼を全開にして飛び立つ。
「あんなガキと付き合ってられるか。」
俺は前の世界で某国の人体実験の被検体だった。
「クソッタレがぁ。俺もお人好しになったもんだ。」
悠々と空を飛んでいると、昔のことが思い出される。
「あの頃は本当にクソッタレだった。だがぁ、今の力はその恩恵だと思えば少しは気が楽だがぁ。」
俺は羽をたたみ、地上に着地する。
「はぁ、なんか飯でも、、、」
「おいこっちはどうか?」
「探せ!」
「こっちの道はやめとくか。」
俺は別の道を使う。
金ならそこら辺にいたチンピラからかっさらっていったやつがまだある。
近くの定食屋に入り、注文をする。
「普通の定食をくれ。一番食われてるやつ。」
「いいぜあんちゃん。好みじゃなくても文句言うなよ。」
「あぁまずい飯は慣れてる、、、」
すると勢いよく扉が開けられ、騎士団の連中が入ってくる。
「御免!こんな人相をした男はいるか?」
騎士団は手配書を取り出し店長に見せる。
「チッ俺はぁここ、、、」
「知らねぇな。」
「、、、そうか。もしこんな人相の男を見つけたら騎士団に大至急届け出るように。あとこの男に関係したと思われる子女を捕らえている。手配書の男らしき者が来たら、夕方6時までに出頭しなければ、その子女を処刑すると伝えろ。」
そう言って騎士達は店から出ていった。
「おいお前。なんで俺を庇った?」
「大事な客を守るのは当然だろ?」
そう店長は嘯く。
「あいよ。」
そう言って定食が渡される。
「うまそうに食うじゃねぇか。」
「久しぶりに食うからなぁ。」
「それよりもあんちゃん。さっきの女の子、助けに行かなくていいのかい?」
「、、、俺とは関係ねぇ」
「無理に悪びれなくていいんじゃねぇか?」
「あん?」
「お前さんはその程度の男じゃねぇだろう。あんたが何したかは知らねぇけどよ。」
「知ったような口きくんじゃねぇ。」
そう言って定食代とほんの気持ち程度を置いて店から出ていく。
「あんちゃん。達者でな。」
「ふん。」
そう言って扉をしめた。
俺は無言で道を歩く。
「子女っていうのはあのガキか?チッ頭から離れねぇ。」
そうして俺は広場の方へと歩を進める。
そうしてギロチンが置かれている広場へとたどり着く。
「今日の処刑は見ものだなぁ」
「あぁ、今日は娘の首もはねるらしいからな」
(けっ、趣味のわりぃ連中だ。)
そう考えながらギロチンの方を見やる。
そして公開処刑が始まり、1人また1人と首がはねられていく。
首がはねられる度野次馬は歓喜する。
俺はその様子を黙ってみていた。
そしてついにあのガキが断頭台に上がる。
クソッタレ共はようやくメインイベントが来たことでさらに盛り上がる。
「このまま何もしなけりゃぁあのガキは死ぬのか、、、、」
断頭台にいることで誰からも生きていてほしいと願われずに俯く姿に俺は過去の自分を重ねた。
(俺は何度も人体実験に使われる仲間を見送ってきた。帰ってこないやつもいたが帰ってきたやつもいた。だが帰ってきたやつも帰ってこなくなっていった。)
ガキが断頭台に固定され、処刑の準備が整う。
そして処刑開始のラッパが吹かれ、刃を固定していた縄が解かれたその時だった。
刃は断頭台の真ん中で止まり、ガキの首には刺さらなかった。
「何だ、ここに来て故障か?」
「何やってんだよ!」
観衆からはブーイングが上がる。
処刑人も慌てて見るが何かに引っかかっているわけでもない。
すると、処刑人の背後に一人の男が現れる。
「イヒャヒャヒャヒャ、イヒャヒャヒャヒャ、イヒャヒャー」
「誰だお前!」
「誰だぁ?俺は通りすがりのブラックホールだぁああ」
そう言って処刑人を吹き飛ばす。
「てめぇらもガタガタうるせぇぞ」
「何だお前は!」
「処刑の邪魔すんな!とっとと降りろ!」
観衆からのブーイングを無視し、足で地面を叩く。
すると観衆のいる地面が割れ、足場を失った観衆らはバランスを崩し次々と倒れる。
そこに騎士達が現れ銃を構えたり、剣を抜く。
「お前かっ!騎士団の本部を破壊し、勝手に奴隷を解放したのは!」
「投降するなら命だけは助けてやる。」
それらを聞いてブラックホールは
「イヒャヒャヒャヒャ、イヒャヒャヒャヒャ、イヒャヒャー」
その様子を見て騎士達は狼狽える。
「ったくよぉ。さっきから聞いてりゃお前、自分の立場が分かってんのかぁ?分からねぇんだったら、俺がじっくり丁寧にお前の体におしえてやるよぉおおお」
そう言って翼を広げ騎士の前に素早く移動すると、騎士に重力をかけ、這いつくばらせる。
ブラックホールは地面に押し潰された騎士を踏みつけると、ニタァと笑い、
「お前らは悪党に手加減はしねえんだろ?
とっとと来いよぉクソッタレぇ」
それでも騎士達は「社会のゴミが!」
とブラックホールに向かってくるが
ブラックホールは剣を振りかざした騎士の剣を粉々にする。
「馬鹿な!」
「ご自慢の剣はそんなものかぁ?」
そう言って騎士を宙に浮かせると剣を構えた別の騎士の方へぶつけ、まとめて倒す。
俺は断頭台に縛り付けられている女のガキの縄を解く。
「なんで、なんで助けに来てくれたの?」
「勘違いすんな。ガキごときに盛り上がってる奴らが胸糞悪かっただけだ。」
「だけど、だけどね。私を助けたらこの国を敵に回すことになるんだよ。」
「あんっ?敵だぁ?俺がそんなものに負けると思ってるのかぁ?世界が敵になったら、世界をぶっ潰せばいい、、、だろぉ?」
「すごいね、すごいね。君は、、、」
「おめぇはこれからどうするんだぁ?」
「とりあえず、とりあえず首都からは出るよ。もうこの街にはいられないし、、、」
「その後はぁ?」
「その後は、、、分からない。」
「分からねぇのかよ。」
「分からないけど、君に救ってもらったこの命、いつかこの恩は返したいと思う。」
「勝手に恩義に思ってんじゃねぇよ。だがなぁ、俺は人が何を勝手に思おうが干渉はしねぇ。だから、おめぇが俺に恩義を感じるのも、それを返したくて付いてくるのも勝手だ。」
「それは、それはあなたについて行っていいってこと?」
「それもお前の勝手だぁ。」
そう言ってブラックホールは歩き出す。
「そういやぁ名前を聞いてなかったなぁ。俺はブラックホール、、、、てめぇの名前を教えろ」
「名前はない、、、だから貴方につけてほしい。」
「じゃあお前はこれからホワイトホールだ。名乗りたいなら勝手に名乗れ」
「ありがとう。」
そう言ってガキことホワイトホールはブラックホールについていった。
通りすがりの「反発重力(ダークエネルギー)」 @tiabod
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。通りすがりの「反発重力(ダークエネルギー)」の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます