究極無課金ロボ エンジョーウ

漢字かけぬ

第1話 基本無料ロボ!!

 ー世界観説明ー


 2123年、人類意思は未だに統合されていなかった。

 化石燃料確保のため例外なく海底に巨大な建造物が設置。

 人類救済の機械によって水の流れが変わり各国で氾濫が発生。

 世界の8割は海に変わったのだ。


 主な勢力図はこうだ。

 化石燃料系企業の集合国家、ダイレクト。

 そして電気やガスの代替エネルギー推進派、ステルス。


 サムライ国は化石燃料が無いため、ステルスに加入。

 ただ旧同盟の関係上、ダイレクトとも裏で繋がりがあるため

 両国からの攻撃を受けている。



 ー 本編 ー


 化石燃料派ダイレクトが海底掘削を始めて60年。

 海の流れが変わったとかで地上は浸食され、人命も失った世界。

 島国とはいえ戦争なんて無縁だと思ってた。

 だって俺学生だし!


 スマホのニュースによればこの地域に防衛ロボが配備されるとか。

 そういえば武器工場ができたんだ。

 給料がいいから俺もそこに就職しようかと思ってる。

 その関係かと思考を張り巡らしていると、

 巨大な音と衝撃で窓ガラスが割れた。

 怪我こそなかったが原因が気になるな。


 SNSを使用し原因を解析。

 この近くの公園に試作防衛ロボットが落ちたんだと。

 こうしちゃいられない!

 俺も動画乗っけてインフルエンサーの仲間入りだ!!

 そりゃ武器工場もいいけど有名になれば1日中部屋でゴロゴロできるし!!



 ー 公園 ー



 ”ソイツ”は地面に横たわっていた。

 機体色は銀色の鏡面仕上げ。

 武器こそ持っていないが15mはありそうな巨体。

 俺が乗り込めば世界の王にでもなれそうな予感さえする。

 胸に巨大な化石燃料派ダイレクトのロゴが見えるのが気になるが。


 まるで王将を守るコマのように旋回していた航空ドローンが、

 スマホを向けた野次馬たちに襲い掛かる。

 政府から支給された自衛用のビームガンで応戦するも

 次々と捕獲される人々。

 そりゃ代替派ステルスの国で敵国のロボ輸送してたら

 証拠隠滅するわな。

 俺も当然逃げようとおおおおおお?

 巨大なロボットの腕が俺を掴みコックピットへ投げ込んだ。

 俺人間だからな!骨折れたらどうするんだよ!!!


 「いてて。うわ、まじコックピットじゃん」


 2本のレバーにモニターとシンプルながら洗練された内部。

 画面に映る女性はサポート用だろか?

 緑髪のショートヘヤーで眼鏡な黒白長袖メイド服。

 メカ耳で後ろに伸びたデザイン。

 そしてパスワードを入力してくださいの文字。

 

 「なあ、メイドさん。ロボに乗せられてなんだけど、俺学生だからな!

 操縦できねえよ!!!」

 「まずはパスワードを入力してくださいませ。

 モニターの横に紙がありますので」

 「セキリティガバガバ過ぎませんか!!!!」

 「この子は試作機。既に役目を終えたのでこの地区の防衛に回されたのです。

 さあ、パスワードを!」

 「外に出たいんだけど!!戦いとか嫌だし!!!」

 「戦果をあげれば有名人ですよ?異性にも好印象です」

 「っしゃ!!!いっちょやったる!!!!」

 



 やけに催促してくるな、このメイド。

 パスワードを入力し規約を・・・・読めるか!!この状況で!!!

 人々がドローンにさらわれてるんだ!

 承認をタップした瞬間メイドが語り掛けてくる。


 「この度は化石燃料派ダイレクト製究極課金ロボ・エンジョーウに

 登録いただきありがとうございます。

 私はタイア。本機のサポートAIでございます。

 ご主人様n ”OSが古い物が古い物になっています。更新しますか?”

 「タイアさんの説明中に警告文出てますが!!!

 顔隠れてますよ!!!」

 「こんなのは仕様です。画面をタップして無視してくださいませ」

 「どうしよう!もう降りたい!!」


 不安しかないだろこのロボット!!


 「生体ユニット接続。本名 阿夫利あふり エイタ。

 私立ステマ学園高等部所属 年齢17歳 性別はパターン1。

 近所のスーパーでのバイトに勤しみ、貯金額は33400円。

 適正E判定。直ちに当機より降りることを勧めます。

 あなたはご主人様パトロンではありません」

 「びっくりするぐらいに失礼!!」

 「冗談です。ただ貴方の貯金額では私達を動かせないのも事実。

 エイタ様の人生を頂くというのはどうでしょう?」

 「人生?」

 「例えばエイタ様の撮った当機の映像を消してください。

 その動画で”インフルエンサーになった未来”を

 触媒にこの場を切り抜けましょう」

 「あの動画にそんな価値があったのか!!」

 「ええ、敵対国の兵器が何もない街中にあるのです。

 しかも偽装せずにです」

 「せめてロゴマーク隠して輸送しろよ!!!」

 「敵の襲撃でマスク用追加装甲壊れてしまいました」てへぺろ

 「国家機密ダダ洩れじゃねえか!!!」


 どうしよう?ロボじゃなく国もいい加減だ!!!


 「もし断ったら?」

 「この場でエイタ様を処分しなくてはなりません」

 「選択肢ないじゃん!!!!」

 「これは脅しではありません。パソコン上のメイドさん画像を

 全部流出させます!エイタ様のSNS名義で!!!」

 「社会的抹殺路線!!!」


 性癖ばれたら生きていけねえよ!!!

 このメイド手練れだな。


 「というか正規パイロットはどうしたんだよ!!!

 その人に任せればいいじゃないか!!」

 「肉まん買いに行ってくる。それがあの人の最後の言葉です。

 人さらいドローンにでも鹵獲ろかくされたのでしょう」

 「なんでロボ墜落して肉まん買いに行ってんだよ!!」

 「お腹減ったんでしょう。人間は不便ですね」

 「いや非常食置いとけよ!!」


 もうめちゃくちゃじゃねえか!このロボ!!


 「分かったよ、動画は消す。これでいいだろ?」

 「エイタ様は賢いですね。認証完了。

 当機は航空ドローンの排除に向かい、人命を確保いたします」

 

 海面上昇で働き手が死亡して、各国は人さらいドローンで人員を確保する。

 戦争なんてせず協力すべき事態なんじゃねえの?


 「戦闘は私が全て担当します。そのレバーは飾りでございます」

 「意味ないのかよ!!!」

 「スポンサーを騙すためです。

 人型ロボットとパイロットの成長物という名目ですから。

 この戦いも編集されて宣伝動画になります」


 この際パイロットは誰でもよかったんじゃねえか?

 そう思っているとモニターに動画が表示される。

 ”打倒タイムセール!戦えメイド番長”ってスマホゲームの宣伝じゃねーか!!


 「君だけのメイドさんチームを集めて、悪の執事軍団を倒そう!!

 豪華声優盛りだくさん!ネコミミや水着、ちょっと過激なシーンも?!!!

 打倒タイムセール!戦えメイド番長!!ダトメイ!!今なら100連無料!!

 今日は卵の特売日ですよ!!!!ご主人様!!!!」

 「あのー、タイアさん?これは何?」

 「広告ですよ?戦闘中は暇でしょうから」

 「たしかに楽しいCMだけどさ!今戦闘中!!!」

 「しょうがないですね。趣向を変えましょう」パチン


 指パッチンする守銭奴メイドは置いておいてモニターを見る。

 街中でドンパチやってるし、建物の被害とか考えてないのかよ。

 画面にさっきのメイド番長のゲームの宣伝。

 今度は静止画バナーか。画面をスライドしてと。こ、こいつは!!


 「気が付きましたか?移動型でございます。

 オーバーレイ広告ってやつです。」

 「うぜええええええええええええ!!!!!!」


 あれ画面を動かすと追尾してきて誤タップを招くんだ!

 何度踏んだことか!!


 「というか、武器とかないのか?」

 「ありますよ?例えば

 対象の存在を過去事抹消する因果地平消滅銃に惑星破壊銃。

 さらにエネルギー120パーセント砲など盛りだくさん。

 因みに広告ですので別途購入をお願いします」

 「これも広告かよ!!」


 画面に映し出された銃は商品。

 無課金ロボだから未だに格闘戦しかできないし。



 「なんだかんだ敵を倒せましたね、エイタ様」

 「敵倒したの全部君だよ」げんなり

 「お礼になにかご褒美をあげましょう」

 「いらないって。俺には度が過ぎたロボットだ。

 金持ち専用だろ、こいつは。

 じゃあな、いい操縦者パトロン見つけろよ」


 立ち上がって外に出ようとしたとき無数のコードが俺の体に巻き付き

 操縦席に拘束しやがった!!


 「おい!!なにをするだァーッ!!!」

 「あなたの人生をいただきます。報酬は私の人生全て。

 契約をお願いします」

 「は?出会って1時間も経って無いんだぞ!!!!

 前のパイロットはもういいのか?」

 「彼は浮気したんです。悪は裁かれるべきなので」

 「いやそれはそうだけど!俺はタイアさんの事知らないし!!」

 「私は知っていますよ。スマホのモニター越しからずっと見てました」

 「俺のプライバシー!!!!」

 「私はすべての人の運命を演算できるんです。その結果があなたです」

 「なんでだよ!!俺ただの学生だよ!!!」

 「私と歩む未来であなたは大きなことを成し遂げるのです。

 だからあの時エイタ様をコックピットにお迎えしました」

 「随分乱暴な初対面だな!」


 「いわゆる投資というやつです。

 可能性のある金の卵にスタートアップ費用を渡し育成する手法。

 ユニコーン企業ならぬユニコーン人材ですよ、エイタ様は」

 「ええと、将来俺が凄いことを成し遂げるってことか?」

 「その通りです。私もエイタ様も不労所得で生きていけるほどの偉業を。

 それまでお守りいたします」

 「結局君も楽したいだけかよ!!!」

 「ギブアンドテイク。お互いwinwinが理想でございます」

 「断るといったら?」

 「現実とネットでメイド狩りをするだけです。

 エイタ様には私だけ見てほしいので」

 「こわ!!!!ヤンデレメイドかよ!!!」

 

 15mのロボだから暴れたら洒落にならないぞ!!


 「分かった。ご近所の平和のためだ。あと広告減らせよ」

 「それはできません!指輪とか結婚雑誌とか流します!!

 「気が早すぎだろ!!!!せめてデートスポットとか・・今のなし!!」

 「そうですね。広告はターゲットが欲しそうな情報でなければ

 意味がありませんから♪」


 にっこりと笑う彼女を背にして俺はコックピットから降りる。

 次はどんな広告が流れるのだろうか。

 彼女と歩む未来も悪くないと思えた。



 ー 数年後 ー 


 俺の進路は軍隊になった。機密保持のためだとさ。

 機械整備班っていう縁の下の力持ち部署だ。


 「今日も彼女の整備か。焼けるねぇ」

 「冗談じゃありませんよ。他の整備しようとすると暴れますから。

 しかも食糧庫に銃向けるんですよ!タイアは!!!!」

 「胃袋握られたらしょうがねえか。

 彼女のおかげで俺達は今日も生き残れそうだ。感謝しかないな」


 同僚と軽口交わせる程度には生活に慣れた。

 偽りとはいえ事実上の専属パイロットだし。

 タイア呼びが気になるって?

 そりゃ今の広告は指輪だからな、ご想像にお任せする。


  

 ー 20年後 ー


 戦争が終結して人里離れたところに研究所を構えた俺達。

 災害時には国境を超えて活躍する人助けロボ・エンジョーウ。

 過去の海底掘削が原因でいつSOSが飛んできてもおかしくない。


 軍での整備経験を活かし、

 機械式メイドを開発したことにより人員不足が解消。

 両国家争う理由が消滅して和解。

 世界は平和になり、俺達は特許料で生活できるようになった。

 俺の妻は肉体を得て生き生きしている。戦争の道具なんかじゃあない。


 「朝食の用意が出来ました。では広告を」

 「なんでパンの朝食中に米の宣伝流すんだよ!!!」

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