最終話

 これはどういうことか。

 まぁありていに言えば

「お母さん!これもしかしてお父さんのへそくりじゃない!」

 ということになる。

 昨日、旦那は私たちが寝静まったのを見計らって、プレイヤーの底面に自分のへそくりを同じ色の紙テープで、貼り付けたのだ。

 地震が起きたときにはさぞやびっくりしただろう。有事の際に落ちてきて調べられてしまったら困るが、ガムテープだとあまりにも質感が違いすぎて、触った時にばれてしまいかねない。しかし紙テープだと実際にそうだったように、滑り止めが隠れる関係で落ちてしまいやすくなる。きっとどちらをとるか旦那も悩んだのだろう。まぁ、どちらにせよ紙幣三枚に封筒、紙テープで巻かれたプレイヤーは下にクッションをひいた格好になる。座布団の上にのった携帯は、思いのほか音が良く聞こえない。ましてや、今までピアノのような硬質な台に乗っていれば、その違いは顕著に出るのだろう。

 里音がなんだか水につかっているような、寝ぼけた音と評したのはそういった環境が起因していたのだ。私には分からなかったが。

 というようなことを得々と説明していたのだが、里音はどこ知らぬ顔。きっとこの紙幣の使い道のほうがよっぽど興味があるに違いない。

 まぁ、私もだ。

「お父さん、今日帰るの遅いって言うからお寿司でも食べに行こうか」

「回っていないやつがいい!」

 こら、どこでそんなことを覚えた。

 といってもこれだけあれば二人分なら優に足りるだろう。私は封筒をひらひらと振ってみせた。

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寝ぼけたエチュード 魔法少女空間 @onakasyuumai

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