第4話③ 耕造、85歳の恋(3)

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「おじいちゃん、何か、嬉しそう・・・」

少女が祖父の顔を見ながら呟いた。


病院の一室。

家族が見守る中、男は静かに旅立って行った。


特に苦しむことも無く。

眠るように。


その顔は少女の言う通り、微笑みを浮かべていた。

幸せそうな顔であった。


「きっと、天国でおばあちゃんに会っているのよ・・・」

少女の母、耕造の娘が言った。


「二人、仲が良かったから・・・」

赤くなった両目に涙をためている。


「二年前にお義母さんを亡くして、落ち込んでたから・・・」

少女の父が言葉を繋ぐ。


「おじいちゃん・・・天国でも仲良くしてね」

少女の言葉に祖父の口元が綻んで見えた。


窓から夕焼けがグラデーションを滲ませている。

それは、少女の涙なのか。


静かな病室で彼女はフッと、微笑んだ。

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恋!(プロット集)♯01 進藤 進 @0035toto

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