第80話
「なんだよ、びっくりさせんな!」
「ええ? 仕方ないっすよ、呼んだっすよね? 名前」
「あ、ああ。まあそうだけどよ」
「あ、ツノダさん。買ってきたっすよお、材料」
「おお! お前ほんとに十秒でって言ったら早くなんだなあ。これでやっと鍋パーティーだな、河原で!」
「え? どこでって?」
「河原で?」
「なんで疑問形で返すんだよ。んで、なんで満面の笑みなんだよ、腹が立つからやめてくれる?」
「あ、プロデューサー、皿とかお椀とかどうすんっすか?」
ツノダはニコニコしてニッタを見る。
「いや、わかんないっすよ。笑顔で伝えようとするのやめてもらっていいっすか?」
「わかってくれよお。お椀とかはあれだ、カップラーメンとかの器がいいな、すぐ捨てられて便利だぞ! いやあ、盛り上がって来たなあ!」
ハルキがゲンナリする横でニッタはニコニコしながら準備を進める。
「で、なんの話だったんすか?」
「ん? なんでもねえよ。お前はほんといつも通りだな。てか、なんだあ、その量は。買いすぎじゃねえか?」
「大丈夫っすよ。今日はみんな参加するんすから。たくさんないと、途中で無くなったら大変っすから。ほら、ハルキさん、そろそろ行きますよ!」
「みんなって? ああ、いや、俺は行かねえぞ」
「なに言ってんだ、お前が来なきゃあ始まらないだろ? ほら、行くぞ、ハルキ! これ以上ごねてたら指令にしちゃうぞ。フーッ!!」
「なんだよそれ」
――――――
二人が出て行った事務所で、仕方なく上着を羽織るハルキ。
(あの『紫の聖石』ってのはカタデリー信仰の神官のミイラの副葬品。ペイドルの『聖石』はオルドゥアズ教の地の神の紋章絡みで色は不明。ミヤモトミヤのルスコの『角金の聖石』はオルドゥアズ教の教会の地下にあって、教会は何か重大な事を隠している。ニッタの『青炎の聖石』は俺たちがいたオルドゥアズ教会の孤児院で見つかった。わかんねえ。世界を真の姿に戻すって言葉、オルサスや白いローブの言った、ニッタがその力を持つってのが気になって仕方ねえ。それに、白いローブの男……あれは一体誰なんだ?)
ハルキはそんなことを考えながら外に出た。
「ハルキさーん! こっちっすよー!!」
ニッタの叫ぶ声が聞こえる。
「おーい、ハルキー! 早く来ーい! みんな河原で待ってっぞ!!」
ツノダもハルキを呼んでいる。
そんな二人を見て思わず笑みがでる。
「ま、やることは変わらねえか。消す必要があるなら、何でも消してやる」
ハルキは寒空の下、ゆっくりと歩き始めた。
(完)
イレイサー:File05~07_帝都の聖蹟:指令があれば「憑きモノ」を「ないモノ」に消します。 UD @UdAsato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます