第79話
ツノダの言葉にあきれたハルキが言う。
「俺たちがペイドルに向かったのは遺体消失に取り憑いた遺物が絡んでるかどうかの調査だったよな?」
「ああ、そうです。はい、それです」
「ちっ、そこも忘れてんのかよ。まあいいや、まず遺体消失はオルサス以下『アブソス』の奴らの仕業で、遺体を運んでる。理由は分からねえがな。今後も他の場所で遺体消失が起こるかもしれねえから国家情報保安局にはしっかり情報掴んでもらわないとだな」
「あ、それ、はい。それです。それはイッコから情報来てたわ」
「え? マジで?」
「ああ、イッコとホリだっけ? あいつら二人は今後オルサスを追うんだとさ」
「そうか」
(ハイアットは帝都大学でイッコと同期だったもんな)
「そうか、ってお前、軽いなあ」
「あ? ああ、まあイッコたちが動くならいいや。んで、最初の遺体消失はオルサスってやつがなんか狙ってんだろうけどな、あいつ、空間移動できるみたいだしな。領主の息子、デュアン君の失踪は自作。ま、母ちゃんがあの状況じゃそうなるわな。んで、ファンドリールの進出はペイドルの地下遺跡から何かを持ち出したかったって事だろうよ」
「手遅れかな?」
「おそらくな。オルサスは『紫の聖石』の持ち主なんすよ」
「そうだろうな。って、なんでここにオルサス?」
「ペイドルには多分、別の聖石があった。それが最後に現れた白いローブの男と繋がってる」
「な?! てことはオルサスは別の聖石を持ち出して持ち主に渡したってこと?」
「ああ。あの白いローブの男が『ペイドルの聖石』の持ち主なんだろうよ」
「って、お前それ大変じゃないか! でもお前、それ、報告書に載ってなかったよ?」
「当たり前でしょ、んな事、書けるわけないすよ」
「そこは書かないとだろ? いや、まあ、そうか? まあ、そうだよなあ、ニッタの事もあるしなあ」
「ええ。んで、あの白ローブ、ニッタの聖石を『青炎の聖石』って呼んだんすよ。それからあいつ、お前らは我らオルドゥアズから生まれたって言ったんすよ」
「なんだそりゃ?」
「全然わかんないんすよ。奴らにはわかっていて、こちらにはわかってない事があるって事すよ。腹立つわあ。あー、腹立つなあ!」
「で、蜘蛛の模様の事も全然わかんないか」
「ええ。オルドゥアズ教の地の神の紋章をカタデリー信仰が腕につけてそこを狙った、さっぱりわからねえ。んで、そこにルスコの聖石すよ。オルドゥアズの教会もなんか隠してるってことでしょう?」
「だよなあ。もう全然わからんな。ハルキ、ちょっと整理してくれる?」
ハルキの説明では、カタデリー信仰側が持っている聖石は、オルサスの『紫の聖石』と『ペイドルの聖石』の二つ。ファンドリール本社での出来事を考えると、キョーカは聖石の持ち主でなく、その下についている感じだったという。
また、こちら側には、ニッタの身体に埋め込まれた『青炎の聖石』とミヤモトミヤの『金の聖石』、ただ、ミヤモトミヤの祖父の話ではこれはただの聖石ではない、ということも考えられ、今後のミヤモトミヤの研究で成果が得られるはずだという事だった。
「うーん、どっちにしても、だ。その十四個の聖石を取り合う事になりそうなんだろ?」
「まあ、イッコとホリさんはそれを追うだろうな。俺たちもイレイス指令に『聖石』が絡んでくるだろうし。なんにしてもニッタの――」
「はーい! 呼んだっすか?」
そこに買物を終えたニッタが元気よく入ってくる。
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