第6話 おまけ-作品にまつわる四方山話

★「恋と御縁の浪漫物語」シリーズ

 神明社のある街角を舞台にしたショートストーリーだ。実際には神明社以外に八幡社、氷川社なども入っているのであくまで便宜上である。

 この作品は僕にとって初めてが多い作品だ。

 何よりもまず挙げるべきは、宇宙船も、タイムリープも、魔法も、幻想的な不思議現象も出てこない、思い出と実生活、生活感で綴られる初めての作品だ。この年齢になって僕の初めてのプレーンでノーマルな小説(笑)。別に他の作品もSF作品なだけで、アブノーマルなモノでは無い(爆)。


 また個々の作品は繋がりのない、別々の物語となるので、なるべく物語に出てくるヒロインの彼女たちの職業がダブらないように、無い知恵を振り絞って職業を設定している。これも初めての試みだ。受付嬢、受験生、家業のお好み焼き店手伝い、出版編集者、ピアニスト、弁当屋、新聞記者、会計事務所勤務などだ。

 どのヒロインがどの職業かによって、自ずとプロットが浮かぶモノもあったので、結構この作業は重要だったのかなあ? など振り返って感じた。日常を舞台にすると結構ウエイト、重きを置く事項なのかも。少ない知恵を振り絞った甲斐があったし、その痕跡が自分では作品中のここかしこに垣間見えている。

 SFのジャンルとは書いていて「ここが違う」というところは、摂理や理屈を先に定義しなくて良いので心にゆとりがある。道理や道筋といった型にはめないといけないという圧迫感から逃れられる。具体的に言うと、タイムリープすると時間のつじつまをプロット上に設定しなくてはいけないので、ノートや模造紙にタイムスケールとタイムテーブルを作って、プロットと一緒に埋め込んでいく。場面毎の元号年号やひとりの登場人物の年齢も時代毎に変わるので複雑になる。結構書き出す前の段階がハードだ。

 一方こちらはプロットをゆるめに設定して、人物像、キャラ設定に時間をかけられる。書いていて筆がのることが多い。まあ、実際には筆ではなく、キーボードだけど。

 あと理想の女性像かという話があったが、どうかな? 懐疑的だ。だって最新作のヒロイン、三馬亜佐美はとてもじゃないが、実際に存在したら、僕には手に負えない女性だ。キャラクターとしては。怖いし、姉御肌だし。僕は間違いなく逃げ出す(笑)。

 また理詰めのような作品やSF作品に関して、特に「暦人シリーズ」のようなタイムリープのモノは、その逆で文字通り理詰めで物語を作っていくので出来上がったときのすっきり感は格別である。秩序や決まり事がはっきりしているので、落としどころに話を持って行かないと変なストーリーになる。ある程度は答えが見える物語であるということだ。これはこれで作っていて楽しい。想定した時代でオチを落とさないと、よじれて、ひん曲がった歴史事件を作っておかしな物語になる。

 今回登場させていただいた街は、横浜・桜木町、東京・飯田橋、東京・浜松町、東京・阿佐ヶ谷、藤沢市、鎌倉市、茅ヶ崎市・寒川町、さいたま市・大宮、足利市、栃木市の十地区である。これに伊勢原市が最近加わった。

 登場人物の職業は、受験生、出版編集者、ピアニスト、キャバ嬢、自宅のお好み焼き屋手伝い、お弁当屋店主、果樹園農家、新聞記者、受付嬢、会計事務所助手である。

 一方の一人称の男性のほうは、受験生、もと出版編集のおじさん、百貨店外商部勤務、オフィス機器リース会社、もと画廊勤務で模型屋店主、PCプログラマー、一流会社の会社員、音楽出版社勤務、CD・楽器店店長、居酒屋のオーナー店長である。


主な物語

☆阿佐ヶ谷編

 まず阿佐ヶ谷の作品。これの第一話は加佐子が病気の父親を抱えて、かつての恋人純夫に会いに行くという話だった。その続編は純夫の幼馴染み、もう一人の登場人物、真珠にスポットを当てて大金持ちから庶民へと変化した彼女の物語を描いている。

 こちらは足長おじさんモノに近いストーリーだ。名作文学へのオマージュ的。なので名作小説にも、映画にも、マンガにもよくあるパターンのお話。文学作品の王道要素を拙い僕が、未熟な自分流で描いたモノ。少しだけ現代風に、身近な町に置き換えてのチャレンジである。

 真珠の父親に世話になった遠縁のIT起業家、岩志の登場で、彼女は難を逃れて、細々ながら何とか暮らしていけるようになる。第一話ではスーパーマーケットで健気に働く真珠しか登場しなかったが、彼女がそこに行き着くまでの時間を続編では描いている。


☆船橋編

 次の船橋のお話は完全に少女マンガへのオマージュだ。とりわけ、展開でいけば一九七〇年代後半から一九八〇年代初め頃のプロットっぽくしている。用語やガジェット、アイテムもマンガに関するものを軽くちりばめた。だが作品の舞台は令和の現代である。言葉も今風にするため調べた(笑)。

 軽く説明を入れると、主人公の戀、友達である里海、彼女の彼氏である浜地、そしてその友人の及川に主人公の戀が恋する話。奥手でモジモジするドジな主人公が、何でかその友達の彼氏の友人と恋に落ちて上手くいくというもの。ウチキで十人並みのルックス、何の取り柄もない、目立たない女の子が何故か意中の相手と恋愛成就していく。それこそマンガの様なお話。『昔ありがちだった』とか『懐かしい展開』と思って頂けると嬉しい。

 他にも僕の引き出しには、学校の廊下や通学路で憧れの王子様男子に出会いがしらぶつかって恋に落ちるとか、嫌いだった無骨者ぶこつものが雨の日に捨て猫を守っている姿にキュンとくる、という凄くベタな展開もあったが、小説に使えそうなのは、と考えて、友人の彼氏の友達への憧れという「取り柄無し女子の恋愛成就パターン」のものにした。

 普段はドタバタと理詰め展開の多い僕の素人小説。いつものこれらは人間愛、叙情感、コメディマンガや青春グラフティー、SFモノのノリだが、たまには女性向けマンガの要素を入れるのも楽しいなと思い、実験的に書いてみた。結構古い少女マンガの物語要素って、時が経っても古く見えないな、と自己分析。ご都合主義で現実味は乏しいかも知れないけど、今でも書き方ひとつで楽しい世界観になる。きっと源氏物語の時代から恋は人間の本質の一つなのだろうな。僕が言っても説得力ないけど(笑)。


☆足利編

 前者は足利の石鯛酒造の沙織の兄である石鯛縞五郎いしだいしまごろうのお話。

 まずネーミング。石鯛縞五郎。僕と同世代のかたは覚えている方もいるかも。『おしいれのぼうけん』なんかと並んで、小学生の時の夏休みの課題図書だった理科と絵本を合わせたような児童書のタイトル。「およげ! たいやきくん」も流行っていた頃だ。

 物語の構成は、ショッピングモール受付嬢である沙織、その兄の恋物語となっている。今回の足利編。大学の後輩で両思いだった女性とばったり東京の仕事先で出会うというところから物語は始まる。相手は元ミスコンの優勝者。僕もこの境遇なら告白なんて出来ないなあ。己を知れ! って自分を戒めてしまそう(笑)。そこで妹の沙織が活躍する。鮭野の性格がうつったように。こちらは恋愛と郷土愛がメインのもの。


☆栃木編

 会計事務所勤務の三馬亜佐美のいとこである三馬真名子さんままなこの話である。真名子の方は一応恋愛物語だが、その先にも視点はおよぶ。「いつもの物憂げにも思える毎日が実は幸運なのだ」という概念的な主題。そして婚約者を通してそんな思慮深い日常に気付かされることが物語の流れ。お金、時間、行動と習慣、地域と生い立ちという人間の性格を形成する年輪や成長のなかで、人間のさがによって変わる人生や幸せを若い二人が見つめるという話。こちらは角度によって変わる人間の幸福をどういう見え方で捉えるかというのがメイン。

 そして真名子と言う名前。これは作品の舞台である、あの地域にある地名である。

 いつもながら僕のネーミングセンスなどこんなものだ。



★キャラクターについて

 最後はプロット先行型の僕の描いた拙い物語の中で、キャラクターについての自己分析。話の流れで必要になる性格というモノがある(今はキャラ先行型が主流であり、あまりプロット先行型の人はみない。古いのかな?)。

 その代表例をちょっと七つに分けて分析してみた。一応その作品を読んでいなくても分かるように説明は入れてあるので、お茶でも飲みながらゆっくりと登場人物考察をお楽しみ頂きたい。キャラ先行型の作者さんほどバラエティーには富んでいないが、プロット先行型でもキャラが確立していないとお話が進まないし、展開しないので、そこそこ僕の作品でもキャラ付けは必要である。


❶神田みさき(かんだみさき)・多賀御美希(たがおみき)・三馬亜佐美(さんまあさみ)・浜北芽衣(はまきためい)

 みさき。冴えない中堅出版社社員であるアラサー紀尾井くんの出張帰りを待つ事務の女の子。いつもニット帽を被って電卓を片手に手際よく伝票を整理して、五時になると荷物をまとめて一目散に退社するというのがイメージだ。みさきは『かんなづきの夜』の後半に陽子さんたる神さまに縁結びをしてもらった紀尾井くんのデートの相手である。

 僕の中ではこのみさきと「おとぎ話は表参道で」の多賀御美希はワンセットな人物だ。OLさん同士、仕事は出来るが異性との出会いのない、ご縁も薄い存在。そこで神さまの思し召しが顕在化するといった感じだ。

 美希のほうは、気まぐれなみさきと違い、シンデレラストーリーの渦中で、御曹司の彼を射止めるという少々古風な少女マンガテイストの展開になっている。前者のOヘンリースタイルよりは親しみやすい展開の物語である。

 僕の小説の中では、OLさんは結構な比重を占める設定である。僕の発想の土台となっているものの一つ、星さんや眉村さんなどのショートショート小説の舞台設定がサラリーマン社会や会社生活が多いので、それが起点になっているためと思う。


❷明治美瑠(めいじみる)・細波映磨(ささらなみえま)・角川栄華(かどかわえいか)・鯖江由佳(さばえゆか)・帆立愛海(ほたてあいみ)・河床葉萌(かわどこはも)

 もっと多いのかな? なんて思っていたが、思ったよりも少なかった楽器係女性ヒロイン。僕のプロット展開で楽器で進む話が多いので、話の数だけこの手の登場人物は増える。挙げてはいないがバイプレーヤー的な存在で、フィドル奏者のお駒さんや和琴やチェレスタ奏者の長慶子の時巫女などもいる。

 角川栄華は別格だが、他は皆これから演奏家を志すという登場人物が多い。ブーたれ系の映磨、夢追い人の由佳や葉萌、チャンスをモノにした愛海などだ。

 基本僕は音楽については雑食性なので、ポップスからロック、フォーク、ジャズ、ブルーグラス、カントリー、ラグタイム、クラッシックとなんでも聴いている。ただお気に入りは、ジャンルと言うよりも生楽器のナンバーである。アコースティックな響きがある世界観を小説の題材にはしている。ボーカルの有無とか、ヒット曲かどうかと言うのはあまり関係ない。気に入ったらそれが題材になる。そこでいろいろな楽器が登場すると言うわけだ。音を聴くのはピアノ、自分が弾くならギターというのは、このエッセイでも何度かお話ししてきた通りで、それが作品にも活かされていると自己分析している。


❸真名板戀(まないたこい)・朱藤富久(あかふじふく)

 現代女性の代名詞、自堕落系女性である。自分では何もしないし出来ないけど棚からぼた餅を待っているタイプ。ある意味困ったちゃんである。そこが愛される要因でもある。人間の立ち位置って不思議だ。

 この手の登場人物を作るときは結構イメージから入る。おじさんの僕からしてもヘンテコな若者で奇抜さを持った衣装や性格を考えて構想する。どちらもアートな世界観でかっとんだ女性である。愚図る姿もほぼ一緒、ギャグマンガやコメディーの世界を飛び出してきたような登場人物である。表情もかっこつけずに描写してしまうので、蝶よ花よの扱いはしないキャラクターである。ある意味ヨダレ、はなみず、ずっこけなどは日常茶飯事で描写するし、擬声、擬音の連続で奇っ怪な人物に見えるように演出もされる。そんな扱いの二人だ。


❹神戸あおば(かんべあおば)・数田育美(かずたいくみ)・安香由里(あんこうゆり)

 クラス委員タイプやしっかり者のお母さんタイプである。少々奥手で頭でっかちなところも玉に瑕って感じだ。その白碧はくへき微瑕びかと世話好きの性格が重なるとこう言ったタイプのキャラクターになる。稚拙な男の子よりも一足先に大人になった常識の鎧を着た女の子で自尊心拡大形女性である。

 僕の作品にこのタイプが多用されるのは、三十歳ぐらいになるまでは、こう言う女性がいい女だった時代相があったからだ。僕より十歳以上年上の男性は、この手の女性に弱い。マンガの番長でも、偉いセンセイなどでもこの手の女性がいないと何も出来ないという設定の物語やマンガ、ドラマが多かった。優しく叱られたい感じ? 例えば大原麗子さんとかバカボンママとかかな? この二人並列して良いのか? (笑)

 それより更に十歳以上年長の人たちは色っぽい、都合の良い女性が「いい女」とされ、そんな性格に憧れることも多いようだ。例えるなら『ルパン三世』の峰不二子のような女性だ。

 委員長タイプに話を戻すと、自然にこの手の登場人物が書きやすかったことと、この手の人物を出すとプロットが組み立てやすかったという要因に行き着いた。なので必然的にプロットとこの性格の女性の登場が多くなった感じだ。


❺青空麻鈴(あおぞらまりん)・勘解由小路歌恋(かげゆこうじかれん)/杯佐和(はいさわ)

 ちゃっかり系というか、ジョーカー的な役回りというか、何でもありというキャラクターで考案されたのがこの二人である。これはおちょくりがいのある対象人物(相方)がいて成り立つポジションだ。麻鈴にはボケ役で探偵の逢野安間郎、歌恋にはフリ役の三井みずほというライバルがいて成立するキャラクターだ。

 よく思い浮かべるのが『トムとジェリー』、クレヨンしんちゃんならお母さんのみさえさんと、ドタバタ劇に必要な二人羽織を物語にしたちぐはぐ感である。他にもラムちゃんとあたるくんや刑事ドラマの『噂の刑事トミーとマツ』(例えが古くてごめんなさい)のような絶えず言い合い、絶えず取り合い、最後に優劣の決まる一撃でオチがあるというスラップステック風のコメディな感じだ。ラムちゃんなら電撃、トミマツなら「トミコ~」である。そんな愛情のある確執が面白い物語を導いてくれることが多い。


❻美濃加佐子(みのかさこ)・石鯛沙織(いしだいさおり)

 キャラ的に評判の良い二人。守ってあげたくなる女性だ。奥手にドがつくほどの生き方下手すぎという二人。沙織の兄もそれに近いので、兄妹揃ってという感じだ。加佐子は真面目な自分を変えたくてこんな風になっているので、若いとき、元は❹か❼のタイプだったのかも知れない。こういう女性キャラは物語上、その相手の男性キャラの立ち位置がつけやすくなる。だって当然男性は男気のある守ってあげるタイプになる。実際、加佐子を守った純夫、沙織を守った津真巳は明確に説明や心情を描かずともその性格を定義づけることが出来る。分かりやすい展開に運べるのだ。


❼紗弓えみ(さゆみえみ)・横溝美紗(よこみぞみさ)・青砥零香(あおとれいか)

 最後が僕の描いていて、楽しく嬉しい、しかも描きやすい女性のタイプだ。これらの女性は清楚、奥ゆかしい、健気、優しさを備えたタイプである。むろん栄華や美瑠もこのタイプに入るが、それが強調されているのがこの三キャラクターである。舞台女優、ミステリー好きの女子大生、町の食堂の女将さんと職業はバラバラだが、自分を前に出さず、でも自分をしっかりと持っていて、相手を気遣い、恩を忘れない、相手を傷つけないという、女性と言うだけで無く、人としてそうあって欲しい人物像を託している。だからほんのり、ほんわか系の物語に登場するキャラクターである。真面目で、感動や清涼感を求めるプロットには必要なキャラクターと僕は考えている。


 さて今度は男性編である。僕の作品には女性陣に比べると華やかさを持つ男性の登場人物はあまり出てこない。それは容姿、収入、家柄などの方面でずば抜けたアドバンテージを持つ性質という意味でだ。なので女性向けのマダムノベルや主婦向けコミックのような展開の要素は乏しい。そういう嗜好性が僕にないためだ。実体験のないことは書けない。良くも悪しくも平凡かそれ以下が多い。

 冴えない僕が書いているのに、書き手以上のキャラはそうそう出来てこない(笑)。まあプロット先行という特徴が活きていれば、その分をまかなえると考えているからだ。さりとて、その類いのキャラが全くないわけではない。数少ないそんな王子さまキャラからおじさんキャラ、いつもの冴えないくんパターンのキャラまで順を追って考察してみよう。


山都武彦やまとたけひこ【ショート恋慕・第一話】・鮭野津真巳さけのつまみ【神明社・足利】・宇那木史路也うなぎしろや【神明社番外編】・磐田凛久いわたりく【神明社・熱田】・伊香純夫いかすみお【神明社・阿佐ヶ谷1】

 ここは僕の作品の中では割と二枚目路線の登場人物。普通の人で身近な存在ではあるけどある種のヒーロー的な扱いと思う。

 割と女性を守ろうという展開で登場する男性キャラなので、皆心意気が良い。良家のおぼっちゃま、武彦は父親連れて再登場するし、鮭野は彼女に協力して代役をこなし、田舎育ちのお人好しの性格からか、足利まで出向いてしまう。宇那木も頼まれた友人の親戚が経営する農園の梨を取りに行って、友人の策略に乗っかるというか、その切り盛り役の彼女の健気さに思わず男気を出す。磐田に至ってもかつての部下に愛の手をさしのべるなど、格好良すぎである。どれもこれも僕には出来ない所業である。

 この手の男性の振る舞いというのは多分、男性の本来持っているさがの一部である。この性分はやっかいで、「え格好しい」と表裏一体であることが多い(これ感じるの僕だけかな? 笑)。

 とは言え、おおよそ真面目で、思いやりのある性格でもあるのは確かだ。人間こうあるべきだ、の見本のようなキャラクターで、これにもう少し爽やかさを加えれば、という前提付きだが、往年の少女マンガに出てくるようなヒーローである。今は「王子さま」と言うらしいが……。まあ、僕の作品はそこまでの人物性格に装飾は必要ないのでその一歩手前でやめている(笑)。普通が一番。


逢野安間郎おうのやすまろう【マリン嬢】・夏見粟斗なつみあわと【暦人1-5】・八雲半太郎やくもはんたろう【暦人1-5】・青砥一色あおといしき【潮風全話】

 ❶の登場人物、二十代、三十代を中心とした優しき男たちとはうって変わり、ジョークと人間臭さを持った四十代、五十代のおじさんキャラ。意外にこのキャラでおちゃらけを描くときに僕は筆がのる。

 次の❸に出てくる山﨑が僕の分身かとひと昔程前、良く訊かれた。残念だが、性格の面では筆者はどちらかと言えば、山﨑より夏見寄りである(あえての話だ)。真面目な部分は山﨑も夏見も同じなのだが、その方向性が少し違うし、性格の明るさも異なる。

 夏見のそれは、他言無用を忠実なモットーとして、気の置けない仲間にはおちゃらけながらもちゃんと寄り添い、暦人の仕事に関しては知識と体得をもって真摯な取り組みをする三位一体とした性格だ。時折、苦手なモノはだんまりを決め込んだり、いつの間にかドロンしたりとなかなかの処世術も持つ。この辺は見習いたいモノだ。ただし彼女、妻となる栄華さまにはまるっとお見通しのようだが(笑)。

 そしてこの中では真面目な一本気質の一色が一番いい男だ。妻の零香は幸せ者である。また良い具合にメニューを出したり、提案をしたりもする。人間思いのワームハートだ。 

 だらしなさではダントツで逢野だろう。これは王子さまパターンの逆でダメンズの男性に、なんだかんだ言って世話を焼いてしまう性分の相手役の登場で僕の手を介さなくても物語は上手く回り始める。そう麻鈴である。スラップスティックの展開では定番である。だが身の回りにこういうのがいたら僕は、彼のような人間とは極力関わらないようにすると思う(笑)。やっかい事を引き寄せると言う意味で、一般人のくせにその部分だけは凄い魔法使いのようだ。逢野に関してはそんなぐだぐだキャラクターである。


山﨑凪彦やまさきなぎひこ【暦人1-5】・夏芽林太郎なつめりんたろう【ショート恋慕・第二話】・紺部慎こんぶまこと【神明社・栃木1】・紀尾井麹きおいこうじ【かんなづき】・不二夏夫ふじなつお【暦人0-5】・白州岩志しらすいわし【神明社・阿佐ヶ谷2】

 言うなれば山﨑は夏見から毒気を抜いたような人物。馬鹿まじめ、優しさ、お人好しが山﨑。これってそのまま紺部にも白州にも当てはまるのだ。気弱で女性の尻に敷かれながらも優しさを振りまくので、女性も自然と素直になり、優しさを返す。理想の恋人や夫婦関係を築ける男性でもある。

 夏夫も、若いながら、はちゃめちゃな晴海を上手く操縦している部分はあるし、彼女の毒気をちゃんと浄化できる凄い強者。みずほが惚れるのも分からなくはない。

 おじさんから若者までいるこのキャラの括りは、一見自己主張しなさそうに見えて、尻に敷かれているような振る舞いが見えるが、しっかりと奥さんや彼女の手綱を握っている男性陣である。それを分かった上で女性は自分の立ち位置を踏まえたイニシアチブを握っている。すなわち良好な男女関係を築ける賢いカップルの見本のような人物たちなのだ。なので皆、結構人当たりも良く、頭の回転も速い人たちだ。僕とは大違いである(とほほ……)。


神戸かんべあさひ【暦人0】・土生義男どじょうよしお【神明社・タワー編】・魚住兼太うおずみかねた【潮風・第二話】

 彼らの性格の特徴は、甘えん坊な性格? 僕とは真逆だな。年上彼女(妻)のあさひはもちろん、義男も自分で好きな娘にアプローチも出来ないようなしみったれである。そして他人の力まで借りている。ちょうど❶のキャラクターたちとは真逆の性質だ。だが世の女性はこういう煮え切らない(?)男性が好きな人もいるのである。同じカテゴリーに入れているが、自分勝手にアマゾンの奥地に百合を探しに行ってしまう兼太もタイプは違うが、甘えているといえる。皆に心配かけても知らん顔な部分とかでね。物語上の人物なので僕は楽しく書いているが、こういう方々は近くにいると大変かも知れない(笑)。


おわりに

 どうかな? おまけの作品論、お楽しみ頂けただろうか。これらの文章は僕のカクヨムさんで発表しているエッセイ記事を改稿、まとめ直して一つの章にしたモノである。最後に所感、総括の類いでこのおまけコーナーも締めたいと思う。良い作品と思ってくれる人が増えると良いな、といつも願ってやまない。そんな僕の作品所感だ。


 もともとは脱力で書き始めた「マリン嬢」だが、その逢野のおかげで少し楽しくなっている。今度はどんなアホな役回りを演じさせようか、などと考えているためだ。そして懐かしいマンガのオマージュを刷り込んでおちゃらけるシーンは常に考えている。

 先述した「恋と御縁の浪漫物語」のシリーズでは、男女の出会いを通して人間模様をどこまで描けるかを模索している。俗っぽい恋愛模様や恋愛の過程ではなく、出会いという偶発が生み出すそこにいたるまでの人生観を織り交ぜるのが僕の主題と思っている。

 また「暦人」に関しては今更言うまでも無いが、僕のライフワーク小説に近い物語だ。山﨑も夏見も八雲も、美瑠に、栄華に、富久と僕の脳内では、彼らが走り回っている。そこに歌恋やみずほ、時巫女たちも飛び回る。この作品を生み出したことは幸運だと素直に思っている。そうで無ければ二十年以上も頼まれもしないのにこの作品を書き続けていない(笑)。


ではまた新作でお会いしませう

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拙作の歩き方 南瀬匡躬 @MINAMISEMasami

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