エピローグ

 年が明けて、2023年になった。

 今日は快晴だ。初詣日和だ。


 年末のあの日のことを振り返ると、夢だったんじゃないかって思う。

 あの部屋から僕は確かに生還した。


 他のメンバーがどうなったのかは、よく知らない。

 最後の瞬間、部屋は完全に暗転したのだから。

 でも、たった一人だけ例外がいる。


「――おまたせ! 和也くん」


 初詣の人混みが赤い鳥居に向かう中、僕のもとにたどり着いたのは、香菜だった。

 余所行きっぽい白のロングコート。その下からグレーのスカートが覗く。


「あけましておめでとう。香菜、――実在したんだな」

「何、それ? ひとが初デートのお誘いに乗ってあげたのに。ちゃんとLINE返していたでしょ?」

「あ、いや、LINEはAIのボットでも返せるからな。かなり上手く」

「ちょっと、和也くん、ひどくない?」


 むくれてみせた彼女。でもその目は笑っていた。


 あの日、デスゲームの中で、僕は榎本香菜に心を奪われた。

 だからどさくさに紛れて名刺を渡したのだ。


 あの空間から解放されてすぐに、彼女は連絡をくれた。

 そこで僕は「会わないか? 初詣にいかないか?」と提案したのだ。

 どこか初々しいデートのお誘い。


「すぐに誘いに乗って、尻軽な女だと思ってないわよね?」

「そっちこそ軽薄な男だと思っていないよな?」


 言葉は踊る。心が躍る。

 空は青くて、世界は広がっていく。

 2023年が動き出す。


「思っていないわよ。だって、なんだか、根暗そうだもん」

「うるさいよ!」


 今年もきっとAIはまだまだ進歩するのだろう。

 人間とAIの境界はまだまだ溶けていくのだろう。


 そんな時代だからこそ、しなやかに、自分らしく、今年も生きていきたいと思う。

 望むらくは、触れられる、確かな存在の、君と。


「――行こうか?」

「うん」


 君の手を取って、僕は鳥居へと続く石段を登り始めた。


 <了>



 ☆★


(あとがき)


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◎ 「誰がAIだったか?」答えは近況ノートで公開中です! AIの台詞生成に使っていた方法も限定公開で書いています。

https://kakuyomu.jp/users/tsuyumaru_n/news/16817330651359774970

 

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この中に一人、GPT-3がいる! 成井露丸 @tsuyumaru_n

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