トリッキーシュートが観たい

#365日ショートショート 362

　早く『真・トリッキーシュート』を観たい。

　子供のころアニメ化されて一世を風靡した『トリッキーシュート』。この漫画に感化されサッカー選手を目指した子が無数にいたことはよく知られている。かくいう私も『トリッキーシュート』の大ファン。原作はもうボロボロになるほど読み返したし、アニメもリアルタイムで観ていた。名実ともに、偉大な作品だ。今だって目を瞑ればあの名場面の数々が脳裏を駆け抜けていく。

　そんな『トリッキーシュート』が、まさかの新作劇場用アニメ映画に……。当時の監督やスタッフが集結し、なんと原作者の先生まで総監督で加わられて、改めて『トリッキーシュート』を語り直すらしい。

　観に行かなければならない。なにがあっても、観に行かなければならない。キャラデザが大きく変更になりファン界隈はいくらか荒れたが、こだわりの煮込みのような熱すぎる内容に公開直後から大絶賛が続いている。世の中とは不思議なものだ。

　さて、往年のトリシューオタとしては、一刻も早くスクリーンに駆け付けなければならない。面白いとか面白くないとかを超えた、なにがスゴいものを見られる予感がする。血が騒ぐとはこのことだ。

　とはいえ、まだまだ。今の私にトリシュー新作を目撃する資格はない。改めてトリシューが描かれるとなると、まずは原作を全部読み返さなければならない。単行本にして56冊。それと、原作者監修の小説が7冊もある。言うまでもなく旧アニメシリーズ全142話も復習が必須だろう。原作や旧アニメを基にどこをどう変えたのか。最新のスタッフは原作をいかに解釈したのか。それを初見という驚きに満ちた状態で感じ取り、飲み込む。それがないといけないんだ。

　でも、悔しいことにそんな時間がない。仕事が終わったら寝て、起きたら仕事に行く。そんな生活では復習なんて無理なのか。いや、しかし。でも……。復習を仮にさぼったとして、もし私が新作に込められた何かしらの意図に気づけなかっとしたら、それこそ大問題である。そんな自分を許せるはずがない。

　ああ、早く『真・トリッキーシュート』を観たい。