ペテン師と竜の姫
あじみうお
ペテン師と竜の姫
遠い昔のお話です。
ヨーダムという田舎町に、ハルーというペテン師の男がやってきました。
土ぼこり舞う町の大通りに小屋を建てると、そこで占いの店を始めました。
『ドラゴンと暮らす天の国より降臨!
ドラゴン使いのハルーが、あなたの恋を占います。
占い料一回五十ディール』
それから、小さく書き足しました。
『ドラゴン見物、追加料金五十ディール』
ヨーダムの町には、古くから伝わるドラゴン伝説がありました。
ハルーはこれを少し利用して、一儲けしようと考えたのです。
伝説では、ドラゴン使いになれるのは、天の国バーベルの王族だけです。
ハルーは、身なりを整え、腕にはリボンをまきつけました。
ドラゴン使いは、ドラゴンが好む香りのリボンを身につけていなければなりません。
ハルーは『占い王子』として、恋占いの好きな町の娘たちの間で、たちまち人気となりました。
ハルーは、自分をうっとりと見つめる娘たちに、「二年後にはふさわしい恋人が現れますよ」などと、でたらめを言って、楽々お金を儲けました。
ある日のこと、店にまだ十歳くらいと思われる少女がやってきました。
みずみずしい若草のような薄緑色のショールを頭から足元まですっぽりとまとっています。
「ふむ。おじょうちゃんの運命の人は・・・」
ハルーが、いつものようにでたらめを言いかけると、少女が話しをさえぎりりました。
「ドラゴンを見せてちょうだい」
これまでに、追加料金が必要なドラゴン見物を希望する人は、誰もいませんでした。
ハルーは面食らって不機嫌になりました。
「大人の話しは最後まで聞くもんだ。占いとドラゴンで百ディールある?」
少女は百ディール払いました。
そして、さっそく、案内された大きな箱をのぞきました。
「ドラゴンはどこ?いないじゃない」
それを聞くと、ハルーはたちまち目を吊り上げ、そばの机を蹴り上げました。
「生意気な小娘が。おまえのようなバカなガキにはドラゴンなど見えないのだ。とっとと帰れ。二度と来るなよ」
急にひどい言葉で怒鳴られて、少女はびっくりしました。
ところが負けていません。
「無礼者!」
一喝しました。
勢いでショールがはらりと床に落ちました。
艶めく長い髪の毛には、異国の芳香を放つ、深緑色のリボンが結ばれていました。
やがて、大空から一匹の巨大なドラゴンが降りてきました。少女を背中にのせて舞い上がると、小屋ごとハルーを踏みつぶしました。そして、そのまますぐに空のかなたに消えてしまいました。
少女は、伝説のバーベル国の姫君だったのです。雨雲にのまれて行方不明になった、ベビードラゴンを探しにきていたのでした。
ペテン師と竜の姫 あじみうお @ajimiuo
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