第6話 アラサー、保護される。

翌日。


そこには、ほぼ一睡もできず腫れた目と濃いくまを浮かべたアラサーの姿があった。


鎮痛剤は確かに効いてはいたが、完全に痛みを取り去ることはできず、左足全体に広がる肉離れのような痛みはあまりとれなかった。

腰の痛み自体は少し和らぎ、土下座フォームから横向きにならば寝ころがることはできた。

できたはいいが安眠とは程遠く、少しまどろんで寝返りをうとうとしては激痛に起こされて…を繰り返し、結果としてベッドの上には横向きのままでトドのようにおうおう唸るアラサーが打ち上げられていた。

そして、うめき声が聞こえたのか母親が寝床まで見に来た。


「…どうしたの」

「…腰と左足痛すぎて…あぅ…ほとんど寝てない…」

「ギックリかい?」

「…わかんない、ギックリっぽいけどなんか足まで痛い…」

「動ける?」

「…横になっててもめちゃ痛い…昨日鎮痛剤取り出すだけでやばかった」

「起こせばよかったのに…」

「疲れてるの知ってたから起こしたくなかった…」

「バカだねぇ…そういうときこそ頼りなよ…行きつけの整体さん一応明日予約しとくね」

「え、明日?」

「その感じだと動くの無理でしょ。今日鎮痛剤と湿布で様子見て、それからだね」



そういうと母はテキパキと準備をする。

私に横になってても食べれるようにパンを用意し、湿布を貼って、整体に連絡を入れて、足が痛むのならと足の下にクッションを用意して…

ものの二時間程度である程度落ち着ける状態を作ってくれてしまっていた。


「…なんかすいません…」

「なに?別に謝ることじゃないよ。困ったときはお互い様だから、母さんが困ったときは、また助けてくれればいいよ」

「…ありがとう」


昨日の深夜、助けてというべきだったかな…

そう思いながらパンを頬張る。




後に聞いた話だが、この時の私の憔悴具合はかなりのものだったとのことで、もしかしたら救急車を呼ぶ必要もあるかもしれないと一瞬思ったほどだったといっていた。



そして、まだ痛みは引かなくとも、少し楽になってパンを頬張る私の姿は


トドみたいだなぁ…


と母も思っていたようであった…

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実録 ヘルニア爆発日記~若くても気を付けよう~ 久吉 龍 @armoredslayer09

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