たてごと♪

 自分は鏡なのではないかと、よく思う事がある。


 ぼくに「つまんねえの」と言ってくる人は皆、ぼくを笑わせることの無い人ばかりだった。


 ぼくに「イキってんじゃねえぞ」と言ってくる人は皆、浮わついた人ばかりだった。


 ぼくに「気持ちワリィな」と言ってくる人は皆、仲間の悪口を当人には聴こえない場で得意げにささやく人ばかりだった。


 ぼくに「ずいぶんと偉そうじゃねえかよ」と言ってくる人は皆、ただひたすらに威張っているだけの人ばかりだった。


 ぼくに「ワガママ言うな」と言ってくる人は皆、とことん自分勝手な人ばかりだった。


 ぼくに「口応えするな」と言ってくる人は皆、言い逃れをするのが大の得意である人ばかりだった。


 ぼくに「ガンつけてんじゃねえぞ」と言ってくる人は皆、無遠慮にも他人をジロジロめまわす人ばかりだった。


 ぼくに「お前が生きてる価値なんか無えよ」と言ってくる人は皆、いなくなったほうが周囲も幸せなのではと疑える人ばかりだった。


 ぼくに「使えねえな」と言ってくる人は皆、人から助けられないと何の役にも立てない人ばかりだった。


 ぼくに「お前がやれよ」と言ってくる人は皆、自分では何もしない人ばかりだった。


 ぼくに「お前にはウンザリだ」と言ってくる人は皆、金輪際御免な人ばかりだった。


 ぼくに「お前はバカだ」と言ってくる人は皆、薬にならない判断をする人ばかりだった。


 ぼくに「視野がせまい」と言ってくる人は皆、けっして自身の得意分野から外を見ようとしない人ばかりだった。


 ぼくに「がんにも程がある」と言ってくる人は皆、自身の意見が通らないとすぐに腹を立てる人ばかりだった。


 ぼくに「お前は何もわかっていない」と言ってくる人は皆、状況を見ずに物を言う人ばかりだった。


 ぼくに「ハッキリしろよ」と言ってくる人は皆、その場その場で言うことが変わる人ばかりだった。


 ぼくに「お前の責任だ」と言ってくる人は皆、自身の落ち度を認めようとしない人ばかりだった。


 ぼくに「あなたの言うことは間違っている」と言ってくる人は皆、議論というものを言い負かし合いとき違えている人ばかりだった。


 ぼくに「これで正しいのだからおれは間違っていない」と言ってくる人は皆、1+1の解は2で正しいという話を火事にみまわれている最中に出すのは不適だという事を理解しない人ばかりだった。


 ぼくに「自分のことをたなに上げるな」と言ってくる人は皆、自身に都合の悪い話を避けてまわる人ばかりだった。


 ぼくに「お気持ちを垂れ流してんじゃねえよ」と言ってくる人は皆、ぼくの意見を否定するその根拠を提示しようとしない人ばかりだった。


 ぼくに「こっちの都合も考えろ」と言ってくる人は皆、ぼくの都合を度外視する人ばかりだった。


 ぼくに「お前のそういう所がダメなんだ」と言ってくる人は皆、短所を指摘されても修正しようとしない人ばかりだった。


 ぼくに「お前のせいでこんな目に遭ったんだぞ」と言ってくる人は皆、普段からぼくを苦しめつづける人ばかりだった。


 ぼくに「お前の作品なんかロクでもない」と言ってくる人は皆、ロクな作品を上げたことすら無い人ばかりだった。


 ぼくに「反省しろ」と言ってくる人は皆、自身の起こした事故にすら気付かない人ばかりだった。


 ぼくに「勉強しろ」と言ってくる人は皆、思い込みが激しくて外界からの情報をしゃだんする人ばかりだった。


 ぼくに「ちゃんと話をしろ」と言ってくる人は皆、ぼくの話から逃げる人ばかりだった。


 ぼくに「お前は信用ならない」と言ってくる人は皆、いい加減すぎて信用なんかカケラも置けない人ばかりだった。


 ぼくに「お前のためにやってんだぞ」と言ってくる人は皆、ぼくの好意をことごとく台無しにする人ばかりだった。


 ぼくに「さびしい奴」と言ってくる人は皆、常に人を見下していないと精神がたんしてしまう哀れな人ばかりだった。


 ぼくに「この弱虫が」と言ってくる人は皆、気を張っていないと簡単に折れてしまうほどもろい人ばかりだった。


 ぼくに「泣き虫」と言ってくる人は皆、涙にまみれた人生を送ってきた人ばかりだった。


 ぼくに「お前はいいよな」と言ってくる人は皆、うらやむべきと思える物をたくさん持ち合わせている人ばかりだった。


 ぼくに「お前のようにはできねえんだよ」と言ってくる人は皆、ぼくにはできない事を次々と成し遂げられる人ばかりだった。


 ぼくに「お前ちょっと変わってんな」と言ってくる人は皆、どこか一本つっ走った考えを持つ人ばかりだった。


 ぼくに「お前のことが心配なんだよ」と言ってくる人は皆、いろいろ抱えている物だらけであんまり気掛かりすぎる人ばかりだった。


 ぼくに「大丈夫かお前」と言ってくる人は皆、休養や救援が必要そうな人ばかりだった。


 ぼくに「苦労してんなあ」と言ってくる人は皆、苦難や波乱との付き合いが長い人ばかりだった。


 ぼくに「」と言ってくる人は皆、こちらがよろしくお願いしたいと思うくらい立派な人ばかりだった。


 ぼくに「上等じゃねえかオルァあ」と言ってくる人は皆、なんだかんだで見上げた根性をしている人ばかりだった。


 ぼくに「お前わかってんじゃねえか」と言ってくる人は皆、この人に理解できない事なんて無いんじゃないかという人ばかりだった。


 ぼくに「バカヤロウwww」と言ってくる人は皆、おかしな冗談をよく言う人ばかりだった。


 ぼくに「ハハッしょうがねえなあ」と言ってくる人は皆、何でも許してあげたくなる人ばかりだった。


 ぼくに「お前最高だな」と言ってくる人は皆、ブッちぎりで最高な人ばかりだった。


 ぼくに「目の付けどころが違う」と言ってくる人は皆、眼光の鋭い人ばかりだった。


 ぼくに「キミのこの作品にはやられたと思ったよ」と言ってくる人は皆、ぼくを正面から殴ってくるような作品を量産する人ばかりだった。


 ぼくに「やさしいね」と言ってくる人は皆、やさしい人ばかりだった。


 ぼくに「出会ってよかった」と言ってくる人は皆、本当に出会ってよかった人ばかりだった。


 ぼくに「キミがいないとさびしくなるよ」と言ってきた人が本当にいなくなった晩、ぼくの涙は止まらなかった。


 ぼくに「あなたがいないとダメかもしれない」と言ってきたあの人は、もういない。

 ぼくがいまダメなのは、そのせいだろうか。



゠了゠

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