呪われた橋
風と空
第1話 扉の先にあるもの
僕の街は壁で覆われている。
たった唯一西側についている扉。
なんであんな所に扉があるんだろう?
お父さんに聞いてみた。
「…… そうだね。なんでだろうね」
お父さんも知らないのかな?
でもお父さんはちょっと困った顔をしていたんだ。
だから僕はどうしても知りたくて、おじいちゃんの所に行ったんだ。
「…… そうか。気になったのか」
おじいちゃんも僕の頭を撫でながら、困った顔をしていた。
でもいつもニコニコおじいちゃんが、一瞬怖い顔をしてボソッと呟いたんだ。
「あんな呪われた橋なんぞ、知らんでいい」
のろわれたはし?
「え?おじいちゃん何?なんていったの?」
僕が聞き返すと、おじいちゃんはいつもの顔に戻っていて後は教えてくれなかった。
「のろわれたはし」って何だろう。
でもこの時の僕は結局わからなかった。
そう。なぜ「呪われた」のか、「橋」が何なのかさえ。
この真実を知る事が出来たのは、それから五年後の僕が13歳になった時。
カーン…… カーン…… カーン……
バタン!
「父さん!何があったの!?鐘が三つ鳴るって事は王が亡くなったって事だろう!?」
外から家に帰った僕の目に飛び込んできたのは、机に両肘をついて泣いている爺さんと父さんの姿。
でも二人共泣きながら笑っている。
「とうさ…… 」
動揺して二人に呼びかけようとした僕の声は、外からの歓声によって打ち消された。
外で何かあったのか?
慌てて外に戻ると、人々があの西の扉があった方向に走って行く。
僕の視線も其方に向けると…… 壁が無くなっている……
壁があった場所の先には、広く大きなみちがあり、川を挟んで僕らの街と僕らの街とそっくりな街を繋いでいたらしい。
「遂に王の圧政が終わったぞー!」「クーデターが成功した!」「第三皇子に栄光あれ!」「遂に成し遂げてくださった!」
気がつくと、パン屋のおじさんや魔導具屋のおじさんや宿屋の女将さんが泣きながら抱きあって喜んでいる。
いつのまにか外に出て来ていた父さんが、ポンと僕の肩に手を乗せた。
「見ろ!リュール!王によって呪われた橋を!」
父さんの言葉で、小さな頃のわからなかった言葉がようやく繋がった。あれが「のろわれたはし」なのか!
「おお!マーチャ、ソアラよ…… 」
爺さんも涙を流して見ていたその先には、押し寄せる大勢の人々と……
「あなた!リュール!」「ああ!ジル!」
この日を境に王よって呪われた橋が無くなり、僕の街が本当の意味で国となった。
呪われた橋 風と空 @ron115
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