第13話 アルティメイトだぜ!~イケメンで有能な俺様が武器以外にもなれる件

 休憩を終えて、岩山の麓をピッケルとシャベルで堀り始めたが・・・


「カガミ。何で私みたいな幼気な少女がこんな重労働しなきゃイケないさね!」


 重労働に嫌気が差して、抗議をしてくる見た目が美少女、中身がロリババアのクエラ。


 文句は言ってるが、ちゃんと手は動かしてるのでコミュニケーションの一種だと俺は割り切る。


「都合のいい時だけ自分を少女扱いかよ。いつもは自分をお姉さんとか言うクセに。」


「うぅー大体、何でスフィとクイミーは外で見張りさね。不公平さね!」


 今回の穴掘り作業は俺とクエラだけで行っている。


「仕方ないだろ。一匹は手足の無い粘体、もう一匹は四足歩行のバクだ。あと、穴掘り中に敵に襲撃を受けるとかイヤだろ?これがベストだ。」


「最初みたいにスフィとクイミーと私でダークボールを打てばもっと楽に掘れるさね。」


 岩山の表面が硬かったので、堀り始めの時だけダークボールで崩した。


「あのな、それをすると鉱石も消し飛ぶだろ?鉱石手に入れて、生産して金を手に入れたら美味い食べ物をいっぱい食わせてやるから我慢しろ。」


「美味いもの、えへへ・・・ほ、本当さね?約束さね!」


 美味い食べ物を想像したのか表情が緩みながらも掘るスピードを上げるクエラ。


 コイツ結構チョロイな~と思ってたら・・・


「あっ・・・」


「おぉぉぉぉい!俺の4000Gがぁぁぁぁっ!」


 クエラのピッケルが二つに折れた。


 ポニアの店で買ったピッケルは一つ4000Gと、ピッケルにしては良い値段の奴を買ったのだ。


「カガミ、元気出すさね。鉄の部分は売れるし、狩ったモンスターの素材で利益はプラスさね。」


 壊した張本人のクセに悪びれずに笑顔で前向きな提案をしてくる。


「お前だけデザート抜きな。」

 

「はぁぁぁぁっ!?これは事故さね!大体、4000Gでネチネチ言うカガミは小さい男さね。マスターならもっと甲斐性を見せて欲しいさね。フン」


 高々4000Gと開き直り、挙句の果てに俺の甲斐性を指摘してくるクエラ。


「素直に謝れば許してやったモノを。そっちがその気なら俺にも考えがある。」


 俺はクエラの尻尾を掴んでモフる。


「ヒャッ!や、やややめるさね。尻尾は弱いさねっ!あ、あん」


 艶っぽい声を段々と上げ始めたので手を離すと、クエラは頬を紅くして自分の身体を抱きしめて睨んでくる。 


「これに懲りたら俺をご主人様って呼ぶんだな駄狐、ククッ」 


「カガミのケダモノ!スケベ!ドS!悪人面!」


 辱しめを受けて悔しいのか罵詈雑言を浴びせてくる。

 

 俺は男だから、ケダモノなのも、スケベなのも認めよう。自分の性質がドSなのも認めよう。


 だが、悪人面だけはダメだ。


「悪人面だぁ?お前にはもっと上下関係を分からせた方が良さそうだな。」


 俺は自分の両手の指をイヤらしく動かす所をクエラに見せながら意地悪に脅す。


「ヒッ!?その手で何をしようとしてるさね!?」


 クエラのこの反応みてると嗜虐心が刺激される。


 このままイケばリアル「クッコロ」が見れるかもしれない。


『ヒャッハァァァッ!煩くて俺様起きちまったぜ!』


 クエラを揶揄ってるとアルテマが目を覚ました。


 全く、黒棒のクセに重役出勤かよ。


『おぉ!飯が転がってるじゃねぇかっ!頂きまぁぁぁす!』


 アルテマから口を模したモノが二つに折れたピッケルに伸びて飲み込む。


「はっ!?アルテマ、お前武器以外も食えるのか?」


『何っ言ってるんだカガ坊?武器として扱える物ならなんだって食えるぜ!何故なら俺様はアルティメイトな存在だからなっ!』


 アルテマが口調に似合わず、有能過ぎる件について。


「え、えーとカガミ?スコップもアルテマに食べて貰うさね。」


「あぁ、そうだな・・・」


 スコップもアルテマに与えると問題なく食べる事が出来た。


 とりあえずクエラを揶揄うのはまた今度だ。


 アルテマにピッケルに変化して貰い穴掘りを再開した。


「これは凄いな。岩がサクサク掘れる。」


 ピッケルVerのアルテマを使うと中々に堀やすかった。


 それからはゲーム内で六日程、現実換算で二日もの時間を、ひたすらに掘っては鉱物を回収し続けた。


 時には町に戻って腹を満たしたり、時にはポニアの店に行ってモンスター素材を売ったり、しながら穴を掘る事に心血を注いだ。


 お陰で採掘Lvが16になって鉱物の回収効率が良くなった。 


 ただ、大した事では無いが一つ失敗したのだ。


 掘ってる途中で方向感覚が狂ったのか知らないが、斜め下方向に進んでしまった。 


 そして、ゲーム内で堀り続けて七日目の事だった。


「うん?アルテマを弾いたのか・・・?」


 今までサクサク掘れてたアルテマが弾かれたのだ。


 逆に考えればそれだけ凄い鉱物かもしれないと言う事だ。


『ゲッ、イヤな衝撃だぜ。俺様を弾くなんて、アダマンタイトかヒヒイロカネか?それともオリハルコンか?』


「お前、自己評価高くないか?まるで、その三個以外だったら簡単に砕けるって事になるぞ。」


『はっ!俺様からしたら大抵の金属はマシュマロ並に柔らかいぜっ!』 


 尊大な事を言ってるが、アルテマを弾いた鉱石の塊が伝説のファンタジー金属には思えない。

 

 アルテマの事だから強がってるだけだろう。いいと所、魔鉱石とかだろう。


 考えても埒が明かないので、暗黒面に吞まれない程度に負の感情を高めて、掘る事にする。


 眷属達にダークボールに撃たせる事も考えたが、崩落事故で乙ったらこれまでの苦労が水の泡だから諦めた。


「オラァッ!くたばれカルコスッ!」 


 カルコスへの怨みを糧に掘ってみると、多少削り取る事が出来たので簡易鑑定をかける。


【魔銅石】


 ほら見ろ、アダマンタイトみたいな伝説の素材じゃないぞ。


 こんな所で伝説の素材が取れたら、それはそれで大発見だけどな。


 でも、このエリアで魔金属は珍しいんじゃないか?


 まぁいいや、魔金属の出回りを調べるのは後でいい。


「オラッ!ドイツもコイツもウゼェんだよっ!」


「カガミ!そろそろ止めるさね、呑まれるかけてるさね!」


「ウルセ・・・いや、悪い。そうだな、冷静さが無くなってた。」


 危ない、負の感情に完全吞まれかけてた。 


 今回ならと、暗黒面を制御出来ると思って高を括ってたが、気づいたらこのザマだ。


「クエラありがとう。だが、後少しで魔銅石の塊を突破出来る気がするんだ。もう一回、負の感情を引き出すけど次は多分、吞まれる・・・」


「なら、これ以上は止すさね!」


 心配そうに声を大に止めてくるクエラ。


 そんなお前だから、俺は信用してるんだ。


「だから、次は殴ってでも俺を止めろ。絶対に殴れ!」


 痛覚設定を20%から60%に上げて、衝撃を結構感じれる数値にする。


 それと、60%なら程よい痛みを感じれる。


「後で怒るとか無しさね?吞まれたら本気で殴って止めるさね。」


「あぁ、怒らないから吞まれたら遠慮なく殴ってくれ・・・オラッ!」


 負の感情を糧に魔銅の塊を掘っていく。


 次第と日々の世間への些細な不満が心を浸食していく。


「何で学校なんて存在すんだよっ!大体、学習なんて動画で充分だろっ!オラッ!」


 IT化が進んだ現代、物理的に子供を集める意味が分からない。


 通信教育で充分だし、コストパフォーマンスも良い。


「学校なんて社会に都合の良い人間を作る為の洗脳施設だろっ!オラッ!」


 社会に出たら個性を出せとか言うクセに、学校では集団行動を重要視した教えをする。


 これが日本の悪しき風習だ。


「教えるなら点数を稼ぐ方法より、株式とか税金について教えろよっ!クソがっ!死ねっ!」


 日本は先進国の中では子供のマネーリテラシーが低く過ぎる。


 大人でも所得税とか住民税を理解してないヤツが多すぎる。ウチの親とかな。


 意味不明なのは会社で一番偉いのが社長だと思ってる人間が多いが、一番偉いのは株主だ。


 結局の所、国は国民に賢くなって欲しく無いんだ。


「オラッ!うん?・・・オイ、突破でき、グハっ」


 魔銅石の塊を突破出来たと思った瞬間、頬に強烈な衝撃を受けた。


 そう言えばクエラに殴れって命令してな・・・

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現実と仮想現実で紡ぐ俺だけの物語~VRMMOで暗黒面なニートに墜ちたので他のヤツも闇に堕としてやる!~ ナイン @NineFlower

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