後日譚
「それでお嫁様は狼様と結婚したの?」
山の奥に朱塗りの柱が並び立つの大きな大きな神社があった。
その神社は昔々この辺りに起きた大飢饉を救ったという狼の神様を祭る神社だった。
女の子は立派な朱塗りの神社の裏手、玉砂利の敷かれた参道の奥の奥、小さな小さな祠の前に立ち美しい女性にそう質問した。
「そうよ、私ってそのあとずっとずっと神様と一緒に暮らしているの」
美しい女性はその長い黒髪を軽く編んだ三つ編みでまとめ、真っ白な着物をラフに着こなし、大きな大きな真っ白な狼をモフモフと撫でている。
「何百年も?」
女の子は驚く。
「ええ、何百年も何千年も、このあと何万年だって神様と一緒よ」
その女性は白い狼に頭を寄せて愛おしそうにお日さまのような暖かい神様の香りを嗅ぐ。
「離婚しないの?」
女の子は鋭いメスを入れる。
「彼が浮気したら考えるかもね」
その女性は白い狼の頭を撫でて笑った。
今のところ浮気の気配すらないらしい。
「いのりちゃん! 帰るわよー!!」
「あっ、ママーー!!」
遠くから女の子を呼ぶ母親の声がする。
「あなた、いのりちゃんって言うの?」
「うん、超美人で優しい名主様の娘の名前なんだって♪」
母親に手を引かれ女の子はバイバイしながら去っていく。
「何してたの、いのりちゃん?」
「へへーん、神様のお嫁様と話してた~♪」
「そうなの? よかったね~♪」
「うん!!」
白い狼とその狼を抱えた女性が目を合わす。
「私って美人で優しい名主の娘らしいわ♪」
女性はウキウキルンルンと白狼のほほを撫で回す。
白狼の神様は少し迷惑そうにしている。
「神様、私幸せですよ」
神様のお嫁様! 山岡咲美 @sakumi
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