サンタの秘密
神木駿
嘘つきのプレゼント
「サンタさんって本当にいるんだよ!」
これは友達に言われた言葉。
大人になった俺はそんな言葉は信じない。
当たり前だ。いつまでもそんな子供じみたことを信じてなんかいられない。
大人になって現実を知り、雑踏の中を駆け巡る俺たちにそんなものを信じる余裕はない。
この時期になると毎年毎年イルミネーションが街を彩り、浮かれた足取りで道を歩くカップルが目に入ってくる。
あの頃のお前とは、いつもこのイルミネーションをキラキラした目で見ていたな。
この時期にしか見れない、なんてあの頃は思ってたけどそんなことはなかった。
少し足を遠くへ伸ばせば、イルミネーションなんか年中どこかでやっている。
そうとも知らず俺たちは……
なんて思いながら俺はとある店に入る。
きらびやかなアクセサリーがショーウィンドウの中に並べられている。
今年のプレゼントは何にしようか。
家が裕福じゃなかった俺たちの家にはサンタが数年に一回しか来なかった。
だから逆にサンタがいると思い込んでいたのかも知れないな。
いい子にしてた年だけはサンタが来てくれていたんだって。
俺はプレゼントを選び終わると、色とりどりの電燈が光る街に戻る。
そしてその足で夜なのに眩しい街を抜けて住宅街へ向かう。
俺のところにはもうサンタは来ないけど、お前のところには毎年サンタが来るようになったな。
俺は玄関のチャイムを鳴らす。
内側から鍵が開けられ、俺は中に入る。
テーブルの上にはケーキが置かれ、クリスマス一色で染められている。
俺は君の前に立ち、プレゼントを渡す。
「今年もサンタさんがお前にプレゼントだってよ」
動かない君の笑顔に立ち上る線香の煙がかかる。
「メリークリスマス」
俺は目の下を少し拭って君にお祝いの言葉をかけた。
サンタの秘密 神木駿 @kamikishun05
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