つまらない毎日 3
ホームルームが始まるまであと10分ほどある。
いつもなら授業の予習をするところだが、中間テストが終わって今日と明日はテスト返却だから勉強は休みにして小説を読むことにした。
小説を読んでいる時間は本の世界に入ったような感覚になるのが心地良い。
「翡翠ちゃんおはよ!」
後ろから肩を叩くと同時に声が聞こえた。クラスで仲良くしてくれる香奈だった。
「うん、おはよう」
「翡翠ちゃんは真面目だね、凄いや。私、本とか読んだらすぐ眠くなっちゃう」
そう言うと私から離れ、いつも一緒にいる輪に入って話を始めた。
新学期初めての授業の時、好きにグループを組んで活動する教科があり1人ぽつんといたところ香奈が一緒にやろうと声をかけてくれた。
それから仲良くなり、普段は香奈と一緒にそのグループにいるようになったが、私が居てもいいのか不安になり申し訳なくなる。
愛想を良くするために笑顔の仮面を付け、明るく接する。
『思ったよりも明るいじゃん』と言われて周りから見たら私はどう思われているのかと不安になるが、ちゃんと笑顔を作れていることに安心する。
ガラガラガラ...
扉が開き先生が入ってきてホームルームが始まった。担任の先生の挨拶から始まり、それほど重要ではないようなことを連絡するとすぐに1時間目の授業が始まる。
今日は五教科分のテストが返ってくる。
今回はあまり集中してテスト勉強ができなかったため、いつもより問題が難しく感じた。
テストは6割や7割ほど正解していて、全て平均で、いつもなら8割以上なのだが今回は全然ダメだった。
私は学校を出て塾に向かう。
塾までは歩いて10分ほどかかる
。大通り沿いにあり有名な塾なので知らない制服をよく見かけるが、私には関係ない。
イヤホンを片耳に付け、音楽をかける。
何も考えたくなくてただ歩くことだけに集中する。
塾の看板が見えてあと少しで到着する。
すると
キキキキキー、ドンッ
大きな鈍い音がして振り返ると、急停止したトラックの先に誰かが倒れていた。交差点の周りは救急車や警察を呼ぶ声と共にスマホを向けて写真や動画を撮る人で騒がしくなっていく。
「事故か、私が変われたら良いのにな」
なんて声が漏れた。
不謹慎だが事故や何かで亡くなることが出来ればなんて考えることが何度かあった。
私には目標なんて無くて引かれたレールを進むことしか出来ないから。やりたい事だって出来ない。
こんな人生ならいつ亡くなっても後悔は無い。
『消え去りたい』
そんな事を考えても今の状況が変わることはなく、私は急ぎ足で塾に向かった。
勉強をしようにも周りは事故の話で持ち切りで全然集中出来なかった。
今日はやる気が出ない。でも来てしまったのだから少しでも勉強しないと。結局1時間だけ頑張って勉強した。
先生に分からないところを聞いて半分くらいは理解出来たと思う。
お母さんが迎えに来て車に乗り込む。
「おかえり」
「うん。ただいま」
私が返事をするとそれから一言も会話をすること無く家に着いた。
スフェーンとあさがお multi @ma_ru_chi
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