つまらない毎日 2
家を出て先に車の後部座席に座り母が来るのを待つ。
学校までは母に車で送って貰っている。学校に着くまでは参考書を開いて読むフリをする。
前にぼーっとしていたら「空き時間をちゃんと使いなさい」と言われたから。
車の中くらいは何も考えないでいたいと考えた私は参考書を読むフリをしてイヤホンで音楽を聴くようになった。
母にはバレていないようで何も言ってこない。
「おまたせ」と言いながら母は車に乗り込み車を走らせた。家から学校までは車で20分ほどかかる。
近くに駅があるのに電車で学校に行ったことは無い。
どうして学校まで送ってくれるのかを聞くと、朝は公共交通機関が混んで遅刻したら大変だからだと前に言っていた。
きっと他にも理由はあるのだろう。
私の通う高校は桜紀学園と言って県内でも名の知れた学校だ。偏差値は70を超えていて人気が高く、何よりお金がかかる。その分設備が整っているので不自由は無い。
授業のレベルが高いため有名大学に進学する生徒が大半を占めている。
そんな学校だからほとんどの生徒は送迎で通学をしている。
親としては周りの目も気になるのだろう。
学校まであと少しのところで私は参考書を閉じてバッグにしまう。
すると
「今日は塾何時頃に終わるの?」
とルームミラーで私の方をちらっと見て聞いてきた。
「今日はちょっと分からないところ教えてもらおうと思ってるから少し遅くなるかも。22時前には帰れるようにするね」
そう返すと分かったと言う返事と同時に学校に着いた。
車を降りてバタンと扉を閉め、軽く深呼吸をして気を引きしめる。
梅雨が明けて空は嫌になるほどの快晴が連日続いている。
異常気象なのか分からないが今年の梅雨入りは遅く、例年に比べて大雨が続いた。晴れなんてこの世に存在するのかなんてくだらないことを考えていると次の日には青空が見えていた。
テレビのニュースでは過去最速で梅雨が終わったと言っていた。
ジメジメした天気も憂鬱になるがこれから夏本番に向けて暑くなっていくのがもっと嫌だと思うのは私だけだろうか。
日差しが身体に当たり皮膚や髪を焼いていく。
そういえば日焼け止めを塗り忘れたことを思い出す。音楽を聴いいている時に思い出していればなんて後悔してももう遅い。
校内に入るにはあと3分は我慢しなければならない。
私は下駄箱を目指していつもより少し早く歩く。
7月に入ってから6日が経ち、気付けば夏休みまであと3週間ほどしか無い。周りは夏休みに何処に行くか仲間内で計画を立てているようで最近騒がしい。
しかし、私に夏休みなんて無い。
私は元々県内でトップクラスの進学校に進学するはずだった。
私に学校を選ぶ権利など与えられることなど無く両親が勝手に決めたのだ。
学校に合格するために休む暇もなくずっと勉強をしていた。
成績が上がっても何も言われず、少しでも下がったら真面目に勉強をしているのかと説教をされる。
私は受験勉強をやる気になれなくて結果は不合格。滑り止めで受けていた今の高校に入学した。
案の定やる気が足りないだとか実力不足だとか散々言われ、今の学校で成績が上位であることを約束にスマホを契約してもらいお小遣いを貰っている。
そのため夏休み中は学校が無い分起きてから寝るまでずっと勉強。
昼間は塾に行き、夜は一日のまとめをする。塾が休みの時は一日中家で勉強しなくてはいけない。
私は生きるために勉強をしている。
下駄箱に着くと校内はひんやりとしていて火照って少し汗ばんだ私の身体を冷やしていく。
校内は綺麗で不自由なく快適に過ごせるのは入学してよかったと思う。
ただ、中学がセーラー服だったため高校ではブレザーを着てみたかった。
高校の制服の夏服は青みがかった白を基調としていて群青色の襟と袖元に白い二本線が描かれている。スカーフは紅色で左の胸元に校章が刺繍されている。スカートも群青色で丈は膝よりも少し長くプリーツになっている。
有名なデザイナーが作ったとかで巷では制服目当てに入学を決める人も多く可愛いと有名だ。
スカートの丈が長くて急いでいる時は少し邪魔になってしまうが、誰もスカートを短くしている生徒が居ないのは生徒指導をされてしまうからだろう。
ぼーっと歩いていると教室に着いた。
扉を開けて自分の席に座り、机の脇にバッグを掛けて中から本を取りだして読み始める。
エアコンの効いた涼しい教室は結構居心地がいい。夏に向けてエアコンの試運転が始まったみたいだ。
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