月曜に腕が届きます
帆多 丁
サンタさんからリオちんへ
〝親愛なるリオちん。サンタです。今年一年いい子にいしていた君に、これからプレゼントを贈ろうと思います。小分けにして、一週間かけて届くので楽しみにしていてください。まずは月曜に腕が届きます。火曜日に胸。水曜日にお腹と腰回り。木曜に腿とスネ。金曜に手と足。土曜に頭です。最後、日曜日にサンタ本人が行きます。メリークリスマス〟
〝わぁサンタさん。とても楽しみです。ところで、ちゃんとクール宅配便で届きますか? 去年は配送中に傷んでしまって大変でした〟
〝はい。その節は多大なるご迷惑をおかけして誠に申し訳ござっとらんわい! 不名誉な過去を捏造するのはおやめください。訴訟!〟
〝わははは。サンタさん、テキストでやりとりしんどい。通話でいい?〟
〝いいよ〟
「もしもーし」
「はや。もう来た」
「さんちゃん、テキストメッセージ好きだよね」
「何を話したか記録に残るからね。便利なんだ」
「まー、好みの否定はしないけどさぁ。こっちは音声入力で文章作って送るんだよ? 二度手間だぁ。通話内容をテキスト変換すればいいじゃん」
「間違いなく話そうとおもったら、やっぱ推敲したいじゃん」
「理系か」
「技術系だわ。調子はどう?」
「ボディの? ドローンの? ヒューマンドローンは好調だよ。あ、でも充電するときにキーンって高い音が目立つようになった。それからホイールがカタカタいってるような感じがある」
「オッケーオッケー。それぐらいならまだ大丈夫だ。新しいのに慣れるまでは並行して使っていけるね。ボディは?」
「リオちんボディはもう寝たきりを極めたわ。ベッドと一体化したんじゃないかって気がする。もうベッドがリオちんの体みたいな? ……ドローンをたまに外に出すけど、周りの反応はまだまだキツいね」
「うん。そこは申し訳ない」
「あ、ごめんごめん。あれの見た目きらいじゃないよ。昔のSFに出て来たピコピコいうやつみたいでさ。それにドローン経由で外を見られるようになったのは、思った以上に助かってるんだ。ドローンを知り合いのクラブに行かせて、リモートでDJのプレイを聴いたりしているよ」
「そっかー。今度の奴が出来上がったらさ、リオちん一人でもクラブ行けるようになるよ」
「マジでか!?」
「マジマジ」
「完全サイボーグ的な?」
「や、リオちんボディはリオちんボディのままなんだけど、完全人型ドローンなので、こう、車いすを押したりできる」
「あ、あ、あーっとつまり、セルフ介護てきな。自分の操作するドローンで自分を押す」
「そう。いや『自分を押す』ではないけど、そう。うちのラボでテストしたけど、駅の階段程度ならリオちんと車いすの両方抱えても昇り降りできる」
「すごくね?」
「がんばった。まだまだ適応できてない環境はたくさんあるんだけど、使ってもらいながら改良すすめるよ。また行こう。フジロック。一緒に」
「サンタさーん!」
「月曜に腕が届きますよ」
「火曜に胸か。巨乳にできたりするの?」
「仕様の追加は納期に響くな。乳のスケーラビリティは次回以降の課題にさせて」
「マジレスか」
「技術屋だぞ。水曜日にお腹と腰回り。木曜に腿とスネ。金曜に手と足。土曜に頭です。最後、日曜日にサンタ本人が行きます。メリークリスマス」
月曜に腕が届きます 帆多 丁 @T_Jota
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