未空間

にゃんぽち

未空間

俺は、目が覚めたら知らない場所にいた。


昨日、俺は疲れていた。

テニス部の練習は日に日にハードになり、俺はついていけなくなっていた。

退部をするかどうかまで追い詰められていた。県では有名な進学校でもあり、勉学にも努めなければいけないので、その板挟みでより苦しめられていた。

疲労困憊だった。体も心も、蝕まれていた。

親は俺に良い大学に入って欲しいと願っていたこともあり、プレッシャーもあった。

その全てが、嫌だった。

今すぐ部活を辞めたい。勉強を辞めたい。なんなら高校を退部したっていい。

何処か遠い場所に行きたいー

それほど、精神的に追い詰められていた。

そうした中俺は、今にも崩れそうな体をベッドに溶かし、眠り込んだ。


そして、今ー


俺は、知らない空間にいた。


「なんだ…ここ…?」


よく、わからなかった。

なんて説明すればいいのかわからないが、そこはまるで様々な色の絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜて、絶えず胎動しているような、そんな変な色と動きをした空がうねっていた。

そこから見える先の景色は薄暗く、地上には墓石にも似た、薄暗い緑色の壁のような柱のようなものが無数に立っていた。

それ以外は、何もなかった。


俺はどうすれば良いのかわからず、ぼーっと地上にへたりこんだままだった。

数時間が過ぎたか、あるいは一分もしていないかー俺は少しづつ思考を張り巡らせることにした。


「俺はもしかして、死んだんじゃなかろうか…?」


まず、出てきた言葉がそれだった。

なんとも言えない気味の悪い空、墓石のような柱達、先の見えない薄暗い地平線ー

ここはまるで死後の世界と呼ぶに相応しい場所ではないか、と。

俺はあまりの疲れに突然死し、こうして三途の川を渡りこの常闇のような広場へと持ち出されたのではなかろうか、そう考えた。

が、しかしー

それにしては、生きている。

俺は、呼吸をしており、この異常な状況を徐々に飲み込むとともに嫌な汗をかき出していた。鼓動が速く動くのを感じ、鳥肌が立っているのも理解していた。

俺は訳の分からない場所に置き去りにされて内心、恐怖心を持っていた。

それと同時に、あまりにも生々しいほどに、生きているという感覚を肌身に感じていた。

つまり、俺は生きている。

生きているというか、死んでるというのには幾ばくか生々しすぎるという感想になった。

そうした中、次の選択肢はー


「あれか…?異世界転生ってやつか…?」


正直、俺はあまりその手のものに詳しくはないのだが、巷では異世界転生というジャンルが流行っている、というのは見聞きしたことがある。

しかしそれは勿論ファンタジーの世界の話であり、作り話であり御伽話であり、現実に存在するなどとは微塵も思っていなかった。

しかし、この現状を見る限り、俺はここにいるのだ。

明らかに異世界といっていいような謎の空間にいるのだ。

これは即ち異世界転生であると考えてしまっても良いのではないか、そう考えた。


「異世界転生…ファンタジー…えーと、なんだ、チートスキル?いや、レベル、パラメーター、擬似RPG…?」


俺はとにかく知ってる知識を並べて単語として喋っていた。

なんとなく聞いたことがあるー

異世界に転生するとチートスキルとよばれる、その世界の中でも常識はずれの概念を付与されることー

また、主人公にはとにかく都合のいいような物語の道筋が建てられ、いわゆる「ヒロイン」と呼ばれる美少女が現れ、主人公に惚れていき、最終的にハーレムを作るー

少々偏った知識かもしれないが強ち間違いということでもあるまい。

俺は少し期待しつつそのくたれきった右手を、恐る恐る空に掲げてみた。


「…バルス」


とりあえずそれっぽい、知ってる単語を口にしてみた。

しかし言葉は、この渇いた空間の中では空虚にも消えていってしまった。

これではない別の方法があるものかと、俺は出来る限り思いつく範囲で様々体を動かして、立ってみたり、足をあげてみたりしたが、特に何も起きなかった。

俺には特殊能力など付与されていないのだろうか。あるいは、また別のトリガーやフラグでもあるのだろうか。

現時点では特に何が起きるわけでもないので、またその場に座り込み、振り出しに戻ることとなった。

そうして、またもや思考を巡らせることにより、第3の可能性が浮かんできた。


これは、夢、または幻覚ではないのだろうか。


もしかしたらこれが1番適切なのかもしれない。

俺は夢を見ているのだ。それか、疲れのあまり何か幻覚のようなものでも見ているのではないか。

これは一時的なものであり、目が覚めたら、正気に戻ったら、すぐにでも解けるものなのではないか。そう考えた。

しかし、夢にしてはあまりにも生々しすぎる。夢特有の、なんと言えばいいか、眠気まなこで、自由の効かない、不安定ではっきりしないとそれとは違く、間違いなく目は覚めきっており、深く思考することも可能である。また、幻覚を見ているという線は、正直無きにしも非ずだが、それが事実だからといってどうすればいいのかさらさら分からない状況にある。そもそも幻覚というものを今まで見たことがないのでそれへの対処方法など知る由もない。

心臓は動いてる。冷や汗が徐々にTシャツに染み込んでいく。

なぜ俺はこんな所にいるのかーまさか、高校から逃れたいという意識の力が働いてこんな場所にいるのではないか。

確かに何もない。その点でいえば自由だ。

俺は解放された。部活からも、勉学からも、親からも。

今、全てから解放された状態にある。

しかし、これが俺の望んだ結果なのか?このなんとも言い難い不気味な場所に単身で放り出されたかのような、この状況がー

そして、次第に、俺はとある恐ろしい現実をまざまざと、はっきりと自覚してしまった。

それはー


「…腹が減った」


そう。空腹である。

俺はこの状態を予測していなかった。人間にとって最も大事な三代原則、性欲、睡眠欲、そしてー食欲。

なんと俺は今まさに目の前に肉でもあれば齧り付きたい程には腹が減っていることを自覚してしまったのだ。

この状況、どう打開すればいいか。

見渡す限り、石の柱ばかり。

地平線の果ては薄暗く、何があるのかさっぱり分からない。

食料になりそうなものなど何一つないように思えた。

これが夢でないのであれば、死後の世界でもなく本当に異世界に転生したというのであればーこれは俺の生命に関わる問題になる。

これは大きな問題である。死活問題ーそう考えると急激に恐怖が増してきた。

俺はこの奇妙な世界であろうことかのたれ死んでしまうのではないか。

この墓跡のような柱達は俺の死を暗示しているのではないかー

空腹に気づき始めると、次第に乾きにも気がつき始めた。

起きてから一度も水を飲んでいない。

疲れ切った身体で毎日ベッドに突っ伏していた俺から言わせると、起床直後は空腹と渇きに飢えている状態が普通なのだ。

これを知ってしまったからには、もうそれを意識の中から遠ざけることはできない。改めて空腹と乾きを意識すると俺は妙な寒気に襲われ、体から震えが止まらなくなった。


一刻も早く、この状況を打開せねばー


俺は、心の底からそう思った。



「ハアッハアッ…」


俺は辺りを調べることにした。

何かちょっとした場所にもヒントがあるかもしれない。そう思い俺は石柱を片っ端から調べてみた。

地面の質感なども調べてみた。

なんともいえない感触ー

ただの地面という他なかった。少し柔らかく、クッション性があったため寝転んでいても体が痛くなることはなかった。ただ、それだけだった。

石柱は、まるで全てがコピーペーストでもされたかのように均質的なものだった。

墓跡のようにただたっており、それは俺の身長よりやや小さい(身長171cm)程度ー

とりあえず首元に届かず、胸元少し上くらいの大きさはあった。

そこから下まで全くといっていいほどズレもなくまっすぐ立っている直角の石柱である。

触ってみた感覚といえば、何も感じない。

冷たさも温かさもない、強いていえば常温ー

叩いてみても音はならず、だがしかしとてもじゃないが素手で壊すことはできないだろうと容易に想像できるほどには硬いものだと推測した。

また、これがどれくらいの深さまで刺さっているものかと疑問に思い、地面を掘ってみようとも思ったが、そもそもこの地面は柔らかさはあれど砂気などなく全くの地面であり、到底掘るという行為が出来なかった。

そのため、何かこの石柱を持って移動したりなど以ての外で、完全にこの地に固定されているといった感じだった。

石柱達はまばらに立っているようにも、等間隔に配置されているようにも見える不思議な立ち方をしていた。

どの石柱を探ってみてもうんともすんとも言わず、これには何も可能性を感じられないと俺は悟った。

なら、行くしかあるまい。

飢えと乾きに押されて俺は、薄暗い地平線の彼方へと歩いて行くことにした。

ここには何もない。だが、あの薄暗くよく分からない場所には何かがあるかもしれないー

そんな期待をもって俺は歩き出すことにした。

裸足で、全身黒ずくめのパジャマのまま、俺は歩き進める。

何時間歩いたか、あるいは数分、数秒か、それほど時間の感覚がわからないままに歩き始めた時、何かが見え始めた。


ー一寸の光が、仄暗い地平線の果てに灯っていた。

俺は歓喜に溢れた。思わず、「おおっ!」と声を出してしまった。

この不気味な世界で、たった一ミリ程だが微かな希望のようなものを掴んだ気がしたからだ。

俺は自然と、駆けていた。走っていた。

あの場所に追いつきたい、あの光の元へ駆け着きたいーそんな期待を胸に、徐々にスピードを上げて、まるで閃光のように石柱達の中を抜けていった。

空は、相変わらず狂った絵の具が混ざり合わさったような模様を描いていた。


走る、走るー

言うまでもなく俺は向かっていた。燈に。

そして、それは徐々に俺のまなこに大きく、大きく映り出していった。

近づいてきているーそんな気持ちを抑えることなく、俺はいつしか満面の笑みを綻ばせ次第に大きく、鮮明になっていく光へと迫っていた。

大きく大きく、より鮮明に燈は光り輝き、そして、とうとうその光の全貌が明らかになるー


「え…?」


俺はー思考が停止した。

なんだ?何が起きてる?なんなんだこれは?

俺はしばらく硬直し、そして、恐怖した。

凄まじい量の冷や汗が大量に流れてくる。それはもう着ている服がぐしょぐしょに濡れてしまうくらいには。

俺は一体何を見たのか、それはー


それは山笠な日傘だな甚だ奈良に日田pdpadap5437かまはたやたjpdpm2464や2734557275まなまかまなやたはあな54248jpjpjg@td5なmqagwgmdgjmgjはかたまなやたらあはあさた5724254な4なjjk2なg+なはなやななあjmdjt7426ugあjtたなはやgか6たamやt


プツン。


ー俺は目が覚めた。

そこは見知った天井だった。

俺の、部屋だった。

周りを見渡す。

通学用のテニスバックがベッド下に置かれている。いつもの風景だ。

スマートフォンを確認し、時間を見たら午前6時。いつも通りの朝だった。


ーやはりアレは夢だったのか。

あまりの疲れにより見てしまった空想だったのか。幻覚だったのか。

それとも、本当に死後の世界を一時的に体験していたのだろうか。あの一瞬だけ異世界に追放されていたのだろうか。

結局、疑問は解消されないまま俺は高校へ行く準備を整えることにした。

パジャマから制服に着替え、扉を開けて2階から下へと降りる。

洗面所に向かって歯を磨き洗顔をする。少しだけ髪を濡らしドライヤーで整える。

今日はどうやら父も母も仕事でいないらしい。やけに静かだと思ったがこういった日はままある。

俺は例の如く飢えと渇きに屈しそうになっていたので大容量のコップで冷蔵庫から取り出したキンキンに冷えたお茶を胃の中に注ぎ込む。そして、食パンを取り出し、温かめ、いちごジャムを塗り、思い切りかぶりついた。

あゝ、これこそ俺が求めていたものだった。

やっとありつけた。高校に行くのには嫌気がさすが、腹の状態は満たされていたのでこれから登校する準備をしていた。

ーしかし、一つ気になる点があった。

いくら親がいないとはいえ、あまりにも静かすぎる。普段なら鳥達や近所の犬が声をあげているはずなのだがそういった様子は一切見受けられない。これはどういったことか。

少々の疑問を感じつつ、やることは全て終え、玄関まで行きテニスシューズをそのまま履き、ついに扉を開けた。


扉を開けた。

そこでの光景はー

あの、夢で見た悍ましい空が宙を支配していた。

一気に寒気が襲ってきた。

なんだこれは?もう終わったのではなかったのか?一体なんなんだ?

周りを見渡すと見慣れた住宅街がある。ただ一つ違うのは、その住宅街達はまるで何者かによって襲撃されたかのように滅茶苦茶に壊されていたことだった。

辺りを見回してみても、まるで戦争でも起きたかのような地獄のような光景が広がっていた。

なんだ、なんだ、なんなんだ、これはー

俺は空いた口が塞がらなかった。

状況を全く理解できなかった。

遠くから見える市のシンボルマークの電波塔もまるで千切れた小枝のように折れ曲がり、焼死していた。黒焦げだった。

完全に、戦禍に巻き込まれたか、大災害が起きたとしか考えられない状況だった。

全身が恐怖で震える最中、俺は地面にふと目を向けると、人が倒れているのを見つけた。

ーまさかとは思ったが、一応そばに駆け寄ってみた。

その人物はー


「母さん…!」


母親だった。しかも、その姿は見るも無惨で、顔の左半分は酷い火傷で爛れており、半身は完全に黒焦げで、左腕は千切れ飛んでおり、腹からは胃のようなものがズルズルと這い出ていた。

完全に、死んでいた。死体だった。

俺は呆然とした。涙など出なかった。ただただ、呆然と立ち竦むしかなかった。

状況を理解できなかった。混乱していた。

何が起きたのか全く分からなかった。

しばらくして、俺は母親の死という現実から逃げるように他の住宅街の焼け野原を見つめていた。そこには、夥しい程の死体が転がっていた。余りにも惨い、筆舌し難い光景だった。

ふと、その死体達を見て何かが脳裏を横切った。

石柱である。

あの謎の空間の石柱ーまるで墓跡のような石柱、これの配置と今現在俺が見えてる死体の配置が完全にそっくりなのである。

まさか、あれは死後の世界ではなく、現実世界を映したものだったのかー?

いや、違う。あれはー


未来の、この世の風景だったのだ。


俺は、保護された。

自衛隊の救急ヘリコプターによってまだ襲撃を受けていない奥地の秘密基地に連れてこられた。

俺は、あの市で、あの街で唯一の生存者だったのだ。

一体何があったのか、俺は自衛隊員の方に聞いた。それは、末恐ろしいものだった。


そう、今この瞬間に第三次世界大戦が勃発してしまったということだ。

米国と中国の間でミサイルの応戦が始まり、日本は中間地点として戦場になっていたのだ。

この戦争がいつまで終わるのか分からない。

もしかしたら、日本、アメリカ、中国を含めたすべての国々が消滅ー即ち文明が消滅してしまうのではないか、そう自衛隊員の方に告げられた。

俺はあまりの急展開に脳が混乱した。

しかし、振り返ってみれば思い当たる節はあった。

あの空間での出来事ー

あの絵の具を混ぜたような異様な色をした空はこれからーいや、あの時起きた戦争の化学兵器が空中に散布されまくった結果作られたものなのではないかとー

そして、あの石柱達はまさに墓跡であり、誰かが作ったものだとー

そして、食べ物も飲み物もなかったのは、文字通り死の世界となっており、食糧はもちろん、水も干上がってしまっていたということー

そう、俺は唯一の生存者として、この世にあった出来事を後世に伝えるためにあの世界を体験して、タイムリープをして、現代の世界にまた戻ってきたということだったのだ。


「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

「唯一の生存者だ。たまたま家が爆撃されなかったんだな…しかし生身のまま外に出てしまったために被曝をしている。後遺症が残る可能性は非常に高い…」


自衛隊の方々が俺に関する話しをしていた。

俺は緊急でガスマスクをつけられ、酸素ボンベで呼吸をとっていた。

そんな中、ふと一雫、俺の頬を伝った。

ー俺はこんなことを望んでいたのではない。

どこか誰もいない場所に行きたかっただけなのだ。勉学を放り出し、部活も辞めて、親からのプレッシャーからも逃げ出して、高校を退部して、それだけでよかったのだ。

全て、壊せなど誰も頼んじゃいない、望んじゃいない。

母親は死んでしまった。俺にいい大学に入るよう強くプレッシャーをかけていたが、それは俺に安定した将来を送ってほしい親心からだった。そんなもの、高校生の俺でも理解できていた。俺は、涙が止まらなかった。

俺が一度願ってしまったからこんなことが起きてしまったのではないかー


「うっ、ううぅ、あううあううぅああぁ‼︎」


俺は声を上げながら絶叫した。

途端に自衛隊の方々が俺の元へ駆け寄ってきた。

大丈夫ですか、お辛かったですよね、あなただけでも他の人の分まで生きてくださいー

そんな言葉を言われた。



審査の結果、俺は被爆こそしたがそこまでの重症ではなかった。しかし、寿命は通常の半分程度だろうと医師には伝えられた。

しかし、悲観することはなかった。

俺だけが生き残ったのだ。あの戦地の中で。

日常とはすぐに壊れてしまうものだ。

こんなにも、一瞬で壊れてしまうとはー

俺は、現実と向き合いながら、冷静さを取り戻しつつ、とあることを行うと決意した。




30年が経った。

日本は辛うじてインフラを継続できているがそれももうあと少しまで。

後数年後には完全に日本国というものが全て崩壊するだろうというのが専門家の見方であった。

アメリカは戦後、紛争が多発し地獄と化していた。中国はアメリカとの戦争に負け各国から分割統治されもはや4000年の歴史は完全に幕を下ろしていた。

そんな中、俺は自衛隊に入隊していた。

47歳、医師からはあと数ヶ月の命と言われていた。

しかし、俺にはやらなければならないことがある。

それはー


この、変わらず色彩が常に変わる毒の空の下で俺はガスマスクとスーツを見に纏い、建物も、生物も、植物すらも生えなくなった地獄の地の果てで、墓を作るということだった。

あえて、名前は彫らなかった。母の名前も彫らなかった。それは、ここに眠る人たちはみな平等であるという俺のエゴから来るものだった。母親だけを特別にしたくはなかった。

俺はあの頃の写真を撮ってあり、更地になったこの場所でも誰がどんなふうに倒れていたか覚えていた。

他の自衛隊の仲間も引き連れ、パイルドライバーで絶対に倒れないように一つ一つ丁寧に押し込んでいった。途方もない作業。しかし俺はこれを30年間も続けてきた。そして、とうとうこの作業にも終わりが見えようとしている。

後もう少しだーそんな時


「腹が…減ったな」


日夜睡眠も取らず、食も惜しんで心身的に限界だった。俺は飢えに飢えていた。渇きに乾いてた。

体力的にも、寿命的にも限界だった。

俺は戦禍のせいで薄暗くなった地平編の果てに、何やら煌めくものを見つけた。

それはー30年前見た、あの燈だった。

俺は夢中で駆け出した。同僚達が止めるのも振り切り、鼓動を大きく振動させて足は止まることを知らない。

走れ、走れー俺は気持ちを抑えきれずガスマスクの下から満面の笑みを浮かべ、全てが手に入ると信じきって、あの頃と同じく光に向かって走り続けていた。

ぼんやりと見えていた光が大きく、くっきりと見えるようになっていた。


「ハア、ハア、ハアッハハハハハァ‼︎」


俺はあの光にさえ触れれば全て救われる、そう信じて手を伸ばした。

ーしかし、俺は思い出してしまった。30年前に同じことがあったことを。あの光は希望は光などではない。

止まれ、止まれよ俺、止まれーー






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プツン。



「ああ、行っちまったか、原子炉に」

「いくらスーツを着ているからといってもあそこまで近くに言ってしまえばもう助からまい」

「まあ、彼はあともう数ヶ月の余命だったんだ。きっと本望なのだろう」

「そうだな、このプロジェクトが始まったのも彼の熱意ある発言から行われたものだしな」

「ああ…直に日本も滅びる。そんな中、誰でもいい、後世にこんなことがあったというのを残しておくのは悪い提案ではない筈だ」

「立てるか?彼の墓」

「ああ、そうしよう。流石に原子炉の方までは足を運べないがな」

「うん、ここでいいだろう。名は彫るか?」

「いや、彼の意思をついで、彫らないでおこう。みな平等、それが彼のモットーだったからな」

「そうだな…ありがとうよ、我が友よ」




Fin.


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