第5話 アマギとフロロ

 町長ギギーラの悪行が知れ渡ってから一夜明け、雨の降る街は日常を取り戻そうとしていた。


「しっかし精霊を捕まえるなんて、悪い事をするパートナーも居たもんだっフル! けどアマギ、いつから気付いてたフロ?」


「うん? そうだね。水不足に困ってるのに、一つだけ普通に営業してる酒場を見つけた時だよ。旅人がこの街に来たら自然と立ち寄るようにして、情報を集めてたのかな」


「な、なんの話だっフル……?」


「なんのって、私達が探ってるのを、町長に伝えた人物の話だよ。違うの?」


「そ、そうだったフロー!? あの優しそうな店主が……じゃなくてっフル! なんでその店主が助けに来ると思ったフロ?」


「うん。水のおかわりを頼んだ時、あの店主、フロロの方を見て驚いていたんだ。それでこの人精霊が見えてるって、すぐに分かったよ。ま、フロロが呼びに行く前に来てくれたのは、ウルルの雨が伝わったからだろうけど」


 フロロと話しながら、アマギは辺りを見渡す。

 活気を失い乾いていた街に、潤いと賑やかな空気が戻っていく。


 雨の精霊と共にあった小さな街。

 その本来の姿を一通り見終えたアマギは、そのまま街を出ようとした。


 すると街を出る前に、例の酒場の前で話す二人組の姿が見えた。


「なんだ、折角雨が戻ったってのに、酒場が開いてないんじゃ酒も飲めないぜ」


「何でも急用が出来たからって、しばらく休業するらしい。急用って、なんだろな」


 住民達の話を聞いて、アマギは二人組の後ろを通り過ぎる。


「そういえばウルルはどうしたっフロ?」


「ああ、結局パートナーにはなれなかったよ。精霊を二人同時ってのはダメみたいだ」


「フロっ? それは残念っヒュー……」


「そうでもないよ。……ほら、また雨が降るみたいだ」


「ウルルも頑張ってるみたいフロっ!」


「あの人もね。……あ、そうだフロロ。ウルルに会って、一つ気になったんだけど」


「フルっ?」


「空の精霊ってのは、みんなそんな喋り方じゃないんだね」


「フ、フロ? それはどういう事っヒュー!?」



 空の想いは、これからも伝わり続く。終わり。

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【短編】ウェザーリポーター~空の気持ちを伝える少女と、変な雪だるまの話~ 夜葉@佳作受賞 @88yaba888

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