文学作品における語りの視点の選択は、作品の全体的な構造と読者の受け止め方に大きな影響を与える重要な要素です。一般的には、主人公を中心とした一人称視点や全知全能の作者視点が好まれます。これは読者が主人公に直接感情移入しやすくなり、作品への没入度を高める効果があります。
しかし、文学的な実験性と新しい物語技法の探求という観点から、脇役や観察者の視点を通じて物語を展開する方法が注目されています。このアプローチは、主人公に対する客観的な視点を提供し、多層的な解釈の可能性を開くことで作品に深みを与えます。
この小説は、後者の語りの戦略を重点的に活用している作品だと思います。
おすすめです。
自身を脇役(モブ)と認識している王宮の侍女、ノエル。
そんな彼女が仕事の後に書いている物語が、ご令嬢たちに気に入られて話題に!
著者・レディ・カモミールとして物語を紡ぐ傍ら、王宮で起きる出来事(ネタ)を、彼女なりの感性で取り入れていきます。
彼女を何かと助けてくれる騎士のロジオン、何かと絡んでくる麗しき王子ヘイデン、ノエルが仕え、特に気に掛けている王子の婚約者シルヴィアーナ。ヘイデンに使える美しき魔術師アイリーン。
ノエルを取り巻くこれらの人々が、これからどう関わり、ノエルにネタを与えてくれるのか? とても楽しみになります。
作家が主人公であるだけに、これを読むのが物書きならば、共感して頷くことも多いのではないかと思います。
ロジオンの便利さ(!)にも納得するはず!
未だ彼女のいる王宮は平和そのものですが、ノエルの生きる世界は、魔王が蘇り、魔物が跋扈する世界のようです。
ノエル自身にも出生に秘密があるような?
今後の展開が楽しみな作品です。