episode10 決別



譽励∞縺茨シ?シ棗ぇえ!!縺ゥ縺?@縺ヲ遘√→荳?邱偵↓どうして私と一緒に譚・縺ヲ縺上l縺ェ縺??来てくれないの??縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒なんでなんで縺ェ繧薙〒縺?∴縺医∴縺医∴縺なんでぇええええええ


 その叫びと共に、怪物は無数の蔓をこちらに伸ばす。

 それはさっきまでの刺突攻撃と同じような挙動だったが、今回はさっきより幾分か速度が落ちているように見えて。


 ───俺の剣で受けきれるんじゃないか?


「避けてッ!!」


「…………ッ!」


 その声に思わず回避行動をとる。

 俺の背後にあったはずの木々が、まるで機関砲にでも打たれたのかと思わせるくらい派手な音をたてて、風穴を開けられていった。

 それは明らかに尋常じゃない速度で突かれたことを暗示している。


「……違う。」



 怪物の動きが遅くなったんじゃなくて、俺の動体視力が、上がった……?


 改めて俺は、その両手で握られた大剣を見る。

 現代の鍵というより、アンティークキーやヴィンテージキーと呼ばれるものに近い形状をしたそれは、月明かりに照らされて鈍色に光り輝いていた。

 常人にとっては持ち上げるだけでも相当の力を要するだろう重量感があるこの剣は、なぜか俺にとって心地良い。

 自然と手に馴染む感覚を覚えてしまう。


縺ェ繧薙〒驕ソ縺代k縺ョ繧茨シなんで避けるのよ!?∝ス薙◆縺」縺ヲ繧茨シ?シ!当たってよ!!譽励ぉ??シ棗ェ!!


 今度は刺突攻撃じゃない。怪物の背部から生えた8本の蔓は鞭のようにしなり、5本は叩きつけるように、3本は足払いでもするかのように、俺に迫ってきた。


縺ゥ縺?@縺ヲ縺薙s縺ェ?どうしてこんな!驟キ縺?o縲∫ァ√?縺薙s縺ェ酷いわ、私はこんな縺ォ繧りイエ譁ケ縺溘■繧にも貴方たちを諢帙@縺ヲ繧九?縺ォ??シ愛してるのに!!


 上から振りかぶられる5本の蔓は、姉さんの几帳面さをも反映しているのか、綺麗な横並びだった。

 それら一片を一撃で切り裂けるように剣で一文字を描く。体は自分の思うより速く、そして思い通りに動いた。


「……ごめん。」


 蔓だと思っていたそれは、肉に近い感触だった。

 赤黒い液体を撒き散らしながら、ブチっと嫌な音がして千切れていく。


 そのまま地を這うように掃われた残りの3本に備えるべく剣山の部分を地面に突き刺そうとした。

 今度は不規則な並び。1本に剣を突き刺し、2本目、3本目の方向へ滑るように剣を薙ぐ。


 が、僅かに蔓の方が速度は上だった。

 2本目の蔓を剣で切断しきる前に、3本目が俺の足に触れるかどうかのところまで近づいていて。


闍ヲ縺励>繧擾シ∫李縺?o譽苦しい……痛い…!棗?∵律闡オ??シ!日葵!!


「ッ!!」




 鮮血が頬に飛び散り、嫌な温かさを感じた。





 しかしその血液は俺のものではない。地面を這っていたすべての蔓は、視界の端に斬り飛ばされていた。


「……危ないよ。ここでも痛みは感じるし、死んだら終わりなんだからね?」


 「ふぅー」と一息ついた日葵さんが半透明の剣に付いた血液を振り払う。

 

「……わ、悪い。ありがとう。」


 自分の思っている以上に身体が軽く、思うような動きができてしまったのだ。

 別に怪我をしてもいいと思っていたわけではなかったのだが、それでも意識が足りなかったと猛省する。

 気を引き締め直した俺は、日葵さんの隣に立って、大剣を構えた。



「棗くん。由里は死んでも"弱音"なんて吐かないんだよ。由里は死んでも"助け"なんて求められないんだよ。」


「だから、辞めてね。」


 俺の顔についた血液を見て、彼女は眉を寄せながら言った。

 "棟方由里"を穢すなと、幻想を捨てろと、その眼が訴えている。

 その通りだ。きっとコレに対して何をしても、何を想っても、意味がない。


「……分かってる。」


「じゃあ、お願い。」


「……わかった。」


 そう答えた俺の目をじっと見つめてから、日葵さんは怪物に向き直った。


縺ェ繧薙〒縺ェ繧薙〒なんでなんで縺ェ繧薙〒縺ェ縺ョ??シなんでなの!!譽暦シ?シ√←縺?@縺ヲ棗!!どうして譌・闡オ縺?縺托シ溽ァ√?縲日葵だけ?私は、遘√?縺√≠縺√≠縺ゅ≠縺ゑシ?シ?シ私はぁあぁああああ!!!


 怪物の周囲から濁流の如く生み出される無数の蔓。

 それらは本当に水のように、四方八方あらゆる方向から俺たちを襲う。

 刺す、打つ、抉る、撥ねる、薙ぐ、流す。そのどれとも取れるような複雑な挙動をする蔓たちを前にしても、やはり日葵さんに動揺は見られない。


「…………いくよ。」


 彼女が小さく呟くと、彼女の踏み出した地面に、結晶が生成される。

 パキパキと音を鳴らしながら、少しずつあたりを侵食していくそれを合図に、全力で前に駆けだした。


「…………ッ!!」


 彼女が大きく息を吸う音が聞こえた。瞬間、全ての蔓が一斉に結晶で覆われ、ピタリとその動きを封じられていく。

 結晶のドームとなったその奥で、怪物は悲鳴を上げる。


驍ェ鬲斐@縺ェ縺?〒譌・闡オ縺?シ?シ邪魔しないで日葵ぃ!!譽励?縲∵律闡オ縺ッ遘√???シ?シ棗は、日葵は私の!!!


 地面、そして体すらも結晶で覆われていたためか、蔓は出てこない。


縺√≠縺ゑシ?シぁああ!!譽玲」暦シ?シ棗棗!!遘√?螟ァ螂ス縺阪↑?私の大好きな!


「棗くん!今!!」


 ─────今しかない。

 大剣を握る手に力を込める。

 ずっと握りっぱなしだったせいなのか、冷や汗かなにかなのか。柄の部分は既に汗ばんでいた。


【おはよう棗。朝から日葵とよろしくやっていたようね。頬が上気しているわ。】


 本当なら、現実でもああだったはずなんだ。姉さんのことだから、きっと本当に難関大学にも余裕で合格して。


【……ねぇ棗。どうしてそんな目で私を見るのかしら?】


 いつも通り、サディストの塊みたいな笑顔で俺を揶揄ってきたはずなんだ。


 俺は、そんな。


【だから……まぁ、これだけの件数なのだから全てが誘発的なものとも思えないけれど、貴方たちが心配するほど大ごとではないかもしれない。と思うわ。】


 たまに見せる不器用な温かさが。

 優しさが、大好きで。



 ─────だけど。


 俺は、姉さんに、ごめんも、ありがとうも、大好きだったことも、なにも。


縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠?ああああああ!遘√?螟ァ螂ス縺阪↑雋エ譁ケ縺後?私の大好きな貴方が、縺ゥ縺?@縺ヲ繧医♂縺奇シ私の大好きな貴方が、どうしてよぉ!


 意味がないことなんてわかってる。

 姉さんほんものは死んだんだから。

 何を言ったって意味がない。


 だけど、偽物でも


「姉さん……ッ!俺、姉さんのこと、大好きだったよ!ごめん……ッ!」


 俺は、渾身の力を込めて、その大剣を振るった。



「譽励?∵律闡オ?縺斐a繧薙↑縺輔>縲ゆコ御ココ繧偵★縺」縺ィ諢帙@縺ヲ縺?k繧上?ゅ%繧薙↑遘√r險ア縺励※縲」



 理解できない言葉を呼ぶと共に、その身体は両断される。

 真っ二つになった怪物は、地面でのたうちまわることもなく、まるで電池の切れたおもちゃみたいに、ピクリとも動かない。


「…………。」


 その身体が灰となって消え去って行くのを見届けてから、日葵さんに話をしようと振り向いた。


「日葵さん、俺……あれ、」


 日葵さんの顔が、妙に青白い…………?

 もしかして気丈にふるまっていただけで、どこか怪我でもしたんじゃ。


「日葵さん?だいじょう─────」


 急いで日葵さんの元へ戻ろうとした時、視界がぐにゃりと曲がる。

 一瞬目の前がチカチカしたと思えば、そのまま身体中から力が抜けていき、立っていることもままならない。立ちくらみでも起こしたみたいだ。


「なん、だ。これ─────」


 なんとか踏ん張ろうとするのだが、一向にバランスは取れない。それどころか、意識まで遠退いていくような気がする。

 倦怠感のような、眠気のようなそれに抗えない。


「……辛いことさせてごめんね。」


 ぽすっと柔らかい何かに倒れたあと、日葵さんの声が聞こえたが、返事はできない。もう目を開けていられないほど、瞼が重かった。


「もう、ぎゅーしても怒られないよ。残念だなぁ。」


 少し苦しいくらいに抱き寄せられる感覚と、震える日葵さんの声を最後に、俺の意識は完全に闇へと落ちていった。

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Ideas//Effect【イデアズ・エフェクト】~理想の世界へようこそ。ここは都合のいい世界。~ 胡麻乃マノ @gomadaree_

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