第10話「一線を越えた夜」
結局、ふたりはホテルに泊まることになった。
「シャワー、浴びようか?」
「う、うん」
私は緊張している消くんの背中を優しく撫でている。
恋愛初心者の彼には私がリードした方が良さそう。
「緊張しなくても良いんだよ?」
「少しだけど、緊張なくなってきた。でも、僕、こういうの初めてで…」
「大丈夫、私は消くんのそういうところも好きだよ?」
私の「好き」を聞いた消くんは甘えるように私に抱きついている。
「母性をくすぐる」ってこういうことなんだね。
「綾さん、あのさ…」
「ん?なぁに?」
「…一緒にお風呂に入ってくれませんか?」
「消くん…」
恥じらいながら一緒にお風呂に入ってくれないかというお願いをしている彼を今は愛しく感じている。
ずっと一緒に居たい。側に居たいという気持ちが溢れている。
「もちろん、良いよ?」
「え?本当に?」
「本当だよ?じゃなきゃ一緒に来ないよ」
消くんは嬉しそうに笑う。
私まで嬉しくなってくる。
私たちはハーッと息を吐きながらお互いの服を脱いでいった。
消くんの体は私と同じ体格をしている。
あまりもの綺麗さにジーッと見てしまう。
「…ん?やっぱり変…?」
「ううん!消くんは消くんだから」
「じゃあ、行こう?」
今までの消くんとは変わって私をエスコートしてくれている。
消くんは立派な男の子だ。
私たちは同じ浴槽に私が下で消くんが上になって入った。
「大丈夫?僕、重くない?」
「うん、大丈夫。消くん、軽いから」
「そう言えば、良いの?」
「え?何が?」
「綾の旦那さん、連絡しなくて良いの?」
「あー、うん。良いの。メッセージしておいたから」
すると、消くんが私と向かい合わせの体勢になった。
そして、私を誘うように口付けた。
「改めてさ、綾って呼んで良い?」
「良いよ、消」
それからふたりは風呂場で何度も口付け合いベッドに移動した。
ベッドに移動した途端、ふたりは激しく求め合った。
愛の言葉を囁き合いながら。
彼の体がこんなにやわらかいことを綾は知らなかった。
「綾、気持ちいい?」
「んぅ…うんっ…。こんな気持ちいいの初めて…」
「綾の身体、柔らかい…」
「消、イキたい…」
「良いよ、イかせてあげる」
こうしてふたりは一線を越えた。
それはそれは熱い夜だった。
プロローグ 花福秋 @hanafukuaki
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